3章

第1話

 俺は仕事を辞めた翌日から、妹がどこに向かうのか、誰と遊ぶのか、誰と仲良くしているのか、全てを調べるために動き始めた。


 朝7時30分を回った頃、妹はランドセルを背負い学校へと向かって行った。俺は妹の後ろをついて行こうと考えていたが、妹はやけに察知能力が高く、尾行などすぐバレてしまうと思い、妹が仲良くしている子を先に探そうと小学校に先回りし、妹の到着を待った。


 数十分後の事、妹は1人で小学校に到着した。俺はそこから妹がどう動くかを監視していると、妹は男の子2人、そして女の子の友達1人と校内へ入って行った。俺はその子達が誰なのかを聞くために同学年と思われる子に妹の名を告げて、どの子と仲良くしているか名前を聞いた。


 するとその子はとても警戒していたのか教えてはくれなかった。当たり前だと思っていたが、やはり情報が掴めないのは痛い。


 俺はすぐ小学校を離れて家へ帰宅しようとすると、遅刻しそうな子が焦って走っているのを確認した。その子は時折妹が公園で遊んだりする時にいるメンバーの1人だと気づく。

 俺はその子を力づくで止めて、情報を聞き出そうとした。


「妹ちゃんのお兄ちゃん?!」

「そうなんだけど。聞きたいことがある」

「う、うん。でも急いでよ。僕遅刻しそーなんだから!」

「妹が良く仲良くしている男の子の名前、女の子の名前を教えてくれ」

「えっと。僕が知ってる限りじゃ妹ちゃんは三丁目に住んでる○君と、電車で二駅くらいのとこの△ちゃんと仲良くしてる。△ちゃんはお父さんにいつも送ってもらってるらしいよ」

「ありがとう。急いでいっておいで」

「うん!」


 男の子を逃がし、情報を抜き出すことに成功した。俺はすぐその情報を使うために、家に帰宅しスマホと財布を持ちながら三丁目の○くんの情報を探そうと向かった。


 三丁目までは自宅から数十分で着くほど近い場所なだけに、妹に探られないよう慎重に動く。○くんの自宅はどこかを探っていると、三丁目の外れに汚いオンボロのアパートを見つける。


「こんなところあったか……?」

「あぁ、そこはね。もう解体されるんだよ」

「え?!」


 ボソッと呟いていた言葉を後ろの老人に聞かれていたようで、急に声をかけられたことで驚いてしまった。


「おや。びっくりさせたかね」

「い、いえ。すみません」

「そこはね。どっかの会社の部長をやられている方と○くんっていう少年が住んでいてねぇ」

「……部長の名前ってもしかして」

「あぁ。その名前だ」


 老婆に俺がつい最近まで働いていた会社の部長の名前を教えるとビンゴ。○くんの父親だということが分かった。


 一気に情報が増えたことで、まずは○くんの周辺、そして部長に関して改めて調べ直そうと決め、その日は妹が帰って来るまでの間自室に籠った。

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