第5話
卒業生の休み期間に入り、デートを重ねれる月日が訪れた。
俺は彼女とデートする際はできるだけ人混みのあるデパートや遊園地などに出かけるようになっていた。
彼女も最初は楽しんでいたが、そのうちデートに選ぶ場所がほぼ同じような所になってしまっている事に不満を持ち始めていた。
「ねー。俺君」
「んー?」
「……なんで似たような場所ばかり行くの?」
「え。いや……」
「いいんだけどさー」
頬を膨らませながら、彼女は不満を顕にした。俺は少し焦りながらどう答えるべきなのか悩んでいると、彼女は笑顔を見せて「冗談だよっ」と言った。
その言葉が本音なのかどうかはさておき、妹から彼女を守る為なんてのは言えるわけなく、俺はどうするべきか悩んでいた。
結果彼女が行きたい場所に行こうと決めた。
「毎回デート場所俺が選んでるから、君が行きたいところ行こうよ」
「んー。私漫画とか好きなんだ。ネカフェとか行きたい!」
「うん。行こう」
ネカフェなら二人きりの空間になる。所々に人がいる。だから妹が現れるわけないと思っていた。
ネカフェに行き受付を済ませた後に漫画を沢山持ってきた彼女。楽しそうに漫画を読む笑みは可愛かった。
俺は漫画を読む時間より彼女を見つめる時間が増えていた。
「俺君ここ!!」
「えっ?」
「凄い感動するんだー!」
彼女の身体が密着し俺は心臓の鼓動が聴こえるほどに緊張していると、彼女もそれを感じたようで、バッと離れると同時に頬を赤らめていた。
「あ、あのさ」
「ん、ん?」
「この後……行きたいところがあるんだけど」
「うん。行こう」
「ありがと」
数時間ネカフェで過ごした後。時刻は十八時を回った頃、彼女は俺の手を握りながらある場所へ連れて行ってくれた。
そこはカップルが多く使う、所謂ラブホといった所だった。俺は思わず彼女が連れてくる場所を間違えたのでは無いかと焦りながら、彼女の手を引っ張り建物から離れようとした時だった。
「……ここだよ。俺君」
「……えっと」
「行こ……?」
上目遣いで今にも泣き出しそうなくらいうるうるした瞳で見つめてくる彼女に、俺は負けた。
ラブホの中に入り、彼女と一夜を過ごすこととなった。互いに初体験だった事で俺も彼女も緊張して上手くヤれなかったが、彼女は満足していた。
「俺君。わがまま聞いてくれてありがと」
「……痛くなかった?」
「んー。ちょっと痛いっ。えへへ」
ニコッと微笑みながら彼女は言った。
俺は彼女の頭を撫でながらキスを交わし、寝ようとした。
チラッと横を見ると疲れ果てて寝てしまったのか、すやすやと俺の腕に抱きつき目を瞑る可愛い彼女の顔があった。
俺は彼女の頬に再びキスをして「おやすみ」と言い、俺も目を瞑った。
この日俺は童貞を捨てたとともに、妹を完全に怒らせてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます