第6話
翌朝眩い日差しが差し込む。俺は寝ている彼女の頬にキスをしてベッドから起き上がり、彼女が起きるのを待った。
全くいじっていなかったスマホを見ると着信が数百件入っていた。全て妹からだった。
1件1件目を通すのも面倒だから俺は最新の数件だけを見た瞬間ゾッとした。
ねぇ。なんであの女と別れてないの
ねぇ。なんで童貞捨ててるの
ねぇ。私と結婚するっていうのは嘘なの?
ねぇ……ねぇ!!!
あれだけ可愛かった妹がただの狂気と化していた。そして、どこから見たのか分からないほど俺の最新の情報が提示されていた。俺はますます妹が危険だと思い、彼女を揺すり起こした。
「うぅーん……」
「おはよう」
「俺君おはよー……」
俺はそそくさとラブホから出る準備をした。彼女もそれにつられるように眠い目をこすりながら出る準備をしてくれていた。
ラブホから外に出たのが午前七時頃。俺は彼女と手をギュッと握り彼女を家へ送ろうとしたが、彼女はそれを拒んだ。
「一人で大丈夫だよ〜」
「で、でも」
「心配性だな〜」
「……道中気をつけて」
「ありがと。俺君」
彼女はまたタクシーを呼び、家へ帰った。俺はそのタクシーが見えなくなるまで見続けた後に、恐る恐る家へ帰った。
すると何事もない、いつもの姿だった。母も父もニヤニヤしながら「初お泊まりどうだった?」と聞く。俺は少し赤面しながら「楽しかった」と答えた。
すると奥の部屋から妹が現れた。上機嫌で「おかえり!」と言ってくれた。あのメールはなんだったのか、不思議に思っていると妹は俺に近づいた途端耳元で囁いた。
「……今日は私と遊ぶよね?」
「あ、あぁ……」
変な汗が垂れ流しになり背中を濡らす。
妹はやはり危険だ。そう感じていた時だった。急に彼女から電話が来る。
「は、はい」
「俺君。明日用事ある?」
「いやないけど」
「なら、デートしよっ!」
「ご両親怒ってない?」
「全然大丈夫だよっ」
「良かった。明日だね。よろしく!」
「うんっ!」
彼女とデートする予定を組み、今日一日妹を構えばいいだろうと楽観的に考えていた。
妹は小学校から帰宅した。十五時になった頃母親が用意してくれていたおやつを俺は妹と一緒に食べた。
「お兄ちゃんおいしいね!」
「お、おう」
「……お兄ちゃん。今日は何して遊ぶー?」
「お前は友達居ないのか?」
「お兄ちゃんが居ればなんでもいいよぉー」
「言っておくが俺はお前の玩具じゃないんだからな?」
「……ふーん」
妹は少し不貞腐れながら、おやつを食べ終わった後に俺の手を引っ張りながら自室に招き入れた。部屋はとても綺麗に片付けられてはいたが所々に貼られているいつ撮ったのか分からない俺の写真にゾッとした。
「お、お前いつ撮ったんだよ。こんな写真」
「上手く撮れてるでしょ〜!」
その写真全て俺が彼女とデートしている時の写真だった。手を繋ぎ微笑む俺の気持ち悪い笑み、彼女が俺の顔を見て微笑んでくれている顔。
だが彼女の顔には何故か赤いバツ印が付けられていた。
「お、お前ストーカーとか」
「ストーカーじゃないよ。私はお兄ちゃんと結婚するの」
「……もうやめてくれ」
俺は妹の部屋から出る。すると妹は少し悲しげな顔をしたが俺を追いかける素振りは全く無かった。
この日俺は妹と会話など一切しなかった。
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