1章

第2話

 そんな日々も一ヶ月が経てば、ストレスに変わってきていた。毎日のように妹は俺と結婚することを確約させるために、俺に告げてくる。


「結婚しようね!?」


 俺はその度に、結婚なんか出来ないと否定していた。妹はその度に泣いては、俺にハグさせるという流れを作り上げた。

 俺はそんな流れを切るためにも一度母親に妹を俺の部屋に入れない、俺と距離を取らせてくれと頼み込んだ。


 母親も一ヶ月もの間俺に結婚しろと言っている妹に対して危機感を覚え始め、その日から妹が俺に近づこうとすれば親が呼び止める。そして会話するのは食事の時間だけとした。


 そのおかげか俺も両親も仕事や勉強に集中出来る時間が増えていた。


 時は流れて妹が小学校に上がる六歳になり、俺は無事に高校に入学した時のこと、両親は、妹が俺と話せないことを虐待だと周りに叫び始めたようで、近所の目や今まで取ってきた信用を失わないためにも元通りの生活に戻すと告げてきた。


 俺は小学校に上がった妹が、俺に告白なんかしないだろうと迂闊にも了解してしまった。それが間違いだった。


 妹は俺と過ごす時間が増えたことで以前よりも多く一時間に一回、寝ている時間、学校に通う時間以外は告白してくるようになっていた。


「お兄ちゃん結婚しようね!?」

「無理だって言っているだろ!?」


 妹に手を出す訳にも行かず、今まで通り無理だと告げるが妹は全く折れず、むしろ俺がツンデレだと思い込んでいた。


 そんな日々も両親は慣れてしまい、妹を止めることなくむしろ「結婚したら?」などと言ってくるようにまでなった。俺はそんなことは絶対にしたくなく、急いで高校に入ってから出来た友達の女の子に告白してカップルになろうと思っていた。


 俺が好きになった彼女は高校入学後に友達になれたクラスでも上位に食い込むであろう綺麗な子だった。周りからの信頼も厚く、男子女子ところ構わず仲良く、人の悪口など一切言わない出来た子だった。俺はその子に惚れていた。


 だがチキン野郎の俺は時間がかかり、数年後、妹が小学校3年生にまでなった高校卒業間際のことだ。


 数年間もの期間永遠と妹から結婚してくれと迫られることに息苦しくなり、俺はとうとう覚悟を決めた。俺は彼女を誘い二人きりで遊ぶ約束を取り付けた。


「ありがとう。今日は」

「ううん。こちらこそ!」

「あ、あのとりあえずあそこ行こう」

「うん!」


 彼女と約束した時間が昼だということもあり、高校生にしてはかなり高価に感じる飲食店に行き、たらふく食べた後にボーリングで消化し、夕方頃カラオケに着いた。


 彼女の歌を聴く。透き通った声で耳に心地よいそして感動する歌声である彼女。俺は思わず拍手をして彼女の歌を褒めると、頬を赤くしながら照れる姿が目に映る。


「可愛い……」

「え?」


 思わず俺は口走ってしまっていた。だがここがチャンスだと思い、俺は彼女に告白した。


「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください!」

「……嬉しい」

「え?」

「私も好きだよ。言いたかったんだけど、断られたらって思って言えなかったんだ」

「そ、それじゃ」

「うん。宜しくね!」


 夢を見ているのかと思うくらい嬉しかった。両想いだと言うことも信じられなかった。俺は嬉しさのあまりに彼女に抱きつく。


 彼女は恥ずかしがりながらもギュッと抱き締め返してくれた。俺はそんな彼女の耳元で囁いた。


「これから宜しくね!」

「うん!」


 彼女は少し涙ぐみながら、返事をしてくれた。

 俺はその日から彼女と付き合うこととなった。


 これが間違いだった。


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