妹の歪な愛
徳田雄一
Prolog
第1話
俺は今絶賛、妹から彼女と別れるように迫られている。助けて欲しいと両親に訴えても、両親は俺が悪いんだから、自分で何とかしろと目で訴え返してくる。
「お兄ちゃんは私と結婚するの!」
なんでこうなってしまったんだろうか。
☆☆☆
事の始まりは数年前、俺が十四歳、妹が四歳の頃のこと。かなり年齢差が開いてるのもあって、受験期までに成績を上げようと勉強する時間が増えていて、妹を構う時間が少なくなっていた。
妹もそれを我慢するように、ひとり遊びが増えていた。
だがある日妹は痺れを切らしたのかウジウジしながら勉強している俺の隣にちょこんと座っていた。
そして俺が鉛筆を机に置き、勉強の邪魔にならないよう妹の相手をしようとした時だった。
「お兄ちゃん、私大きくなったらお兄ちゃんと結婚するから!」
いきなり言われたセリフに俺はただただ固まった。十四歳だった俺は思春期真っ只中で、妹の相手をするのも嫌々だったのにも関わらず、急な告白に尚のこと驚いてしまった。
俺は思わず妹の頬をつねり、自分の頬をつねって夢じゃないか確認していた。
「い、痛いよ。お兄ちゃん!」
「ご、ごめん」
夢じゃないことを確認して、俺はもう一度妹に問いた。今何を言ったんだと。
「お兄ちゃん結婚してって言ったの!」
「……俺とお前は兄妹だぞ?」
「そんなの知らないもん!」
「し、知らないたってなぁ……」
「結婚するの!!!」
「お兄ちゃんは十四歳だ。お前は四歳。結婚しようと思ったらお兄ちゃんがおじさんになってからだぞ〜?」
半分脅し混じりで四歳の子に俺は言っていた。今考えれば、四歳の子には酷なこと言ったし、理解出来るわけなど無かった。
だが妹は四歳という若さにして人間の言葉をマスターし、理解していた。俺はそれに驚きを隠せなかった。
「い、いいの!」
妹は俺の前で泣き目になりながら、頬をプクーっと膨らませて次の瞬間には決壊した。
「けっこんするのおおおおお!!」
俺は泣く妹を抱き寄せギューッと抱きしめると、妹は泣き止む。毎回こうだ。毎回妹の涙にやられる。情けない兄だ。
そして毎回、泣き疲れたのか俺の胸の中で寝る。それをベッドに運ぶまでが俺の日課だった。
妹よ。俺はお前と結婚できないんだよ。
寝ている妹の耳元に囁き、その場を離れる。そして勉強に勤しむ。そんな日々だった。
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