第46話

 (※ウィリアム王子視点)


 この店は、昼の客がいなくなったあと、二時間ほど店を閉める。


 そして、夜の開店までの間に、休憩をしたり、準備をしたりしている。

 ちょうど、その時間になった。


 いつも通り、従業員たちは、煙草を吸うためだったり、食事をするために外に出かけていった。

 そしてそのあと、彼らは夜の準備をするというわけだ。

 この店では、まかないはない。

 昔はあったらしいが、現在はない。


 そして私は、休憩の時間になっても、誰かと外へ食事へ行ったりせず、店の中に残っていた。

 べつに、誘われなかったからというわけではない。

 最初から、私は店に残るつもりだった。

 今、店にいる従業員は、私だけだ。


 この機会を逃すわけにはいかない。


 今なら、許可を得ていなくても、料理を作ることができる。

 邪魔をする者は、誰もいない。

 今こそ、私の真価を発揮する時だ!


 さて、何を作ろうか……。


 料理をするのは、これが初めてだ。

 しかし、これまでに、数々の名店の料理を食べてきた私なら、きっとおいしい料理が作れる。

 えっと……、まずは、どうする?

 よし、とりあえず、肉でも焼くか。


 夜のために仕込んである肉を、拝借することにした。

 まあ、おいしいものを作れば、文句は言われないだろう。


 昔、カウンター席に座って食べた時、そこからキッチンの中をのぞいたことがあった。

 確か……、あの時シェフは、肉を焼きながら、酒をかけていたな……。

 よし、私もそれをやってみよう。


 というわけで、私はさっそく肉を焼きながら、酒を大量にとかけ始めた。


 その瞬間、ものすごい勢いの炎が上がり、酒をかけていた私の腕にまで、火が当たった。


「あぁああああっっついいい!!!」


 私はうしろに飛び退いて、床に倒れていた。

 腕が熱い、いや……、痛い。

 目からは、いつの間にか涙があふれていた。


 それに、肉からとんでもない大きさの炎が上がっている。

 これは、そのまま放置していても、大丈夫なものなのか?


 肉を焼いているというよりは、燃えているという感じだが……。

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