第47話
(※ウィリアム王子視点)
私は、腕を水で冷やしていた。
あぁ、なんてことだ……。
私の腕が……。
痛みは、まだ治まらない。
それに、これは、火傷の痕が残るのではないか?
最悪だ……。
傷一つない私の体に、こんな不名誉な傷が残るなんて……。
私は腕を冷やしながら、燃えている、否、焼いている肉を見ていた。
炎が揺れているところを見ると、少しは心が穏やかになる気がした。
しかし、ものすごい量の煙が出ているが、これは大丈夫なのだろうか?
まあ、たぶん大丈夫だろう。
そういえば、食材を燻す調理法があった気がする。
そうだ、それだ……。
私は無意識のうちに、そんな高等な調理をしていたのか……。
はは……、自分の才能が恐ろしい。
私の中に眠る料理の才能が、既に開花し始めている。
あれ?
なんだ?
なにか、おかしい……。
視界が霞む。
体が、ふらふらとしている。
何か、気分も悪くなってきたような……。
私はそこで、意識を失った……。
*
(ヘレン視点)
今日は、殿下と外食をすると約束しているので、料理を作る必要はなかった。
昨日は失敗したけれど、次こそはうまくやって見せるわ。
それにはまず、レシピが必要ね。
昨日は勘で行けると思っていたけれど、それは無理だった。
そのことがわかっただけでも、収穫はあった。
だから、今日は外食したあと、レシピが載っている本を買って、それで勉強しよう。
そして、殿下が美味しいと言ってくれる料理を作るのよ。
殿下が喜ぶ顔を想像して、私は笑っていた。
きっと、レシピさえ見れば、私にだって料理が作れる。
レシピも見ずに料理をしていた昨日の私は、愚かだった。
とりあえず今日は外食だから、殿下が帰ってくるのが待ち遠しかった。
殿下、今頃何をしているのかしら……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます