第45話

 (※ウィリアム王子視点)


 翌日も私は、休まず出勤した。

 慣れない作業をしたせいか、朝起きた時から、今までに感じたことのないほど疲労感があった。

 しかし、そんなことで仕事を休むわけにもいかない。


 今日も、ひたすら皿洗いだった。


 どうしてだ……、どうして私が、皿洗いなんてしなければならないんだ。

 頼むから、料理を作らせてくれ……。

 そうすれば、私の真価が発揮されるのに……。


 私はこれから毎日、皿洗いだけをする日々を来るのか?

 料理の才能を秘めた人物をこんなところで遊ばせておくのは、まさに愚の骨頂。

 あの店主は、いったい何を考えているんだ?


 よし、直談判しよう。


 私は、料理を作る役割が最も適していると、彼に説明すれば、きっとわかってくれる。


「あの、そろそろ、私にも料理を作らせてもらえませんか? そうすれば、この店にもっと客が集まりますよ」


 私はさっそく店主に頼んだ。

 しかし……。


「そんな戯言を言っている暇があるなら、さっさと皿を洗え! 皿洗いもろくにできない奴に、料理なんて作らせるわけがないだろう!」


「そんな……」


 私の提案は、あっさりと拒否された。

 どうして、私に料理を作らせてくれないんだ……。

 このまま、皿洗い職人にでもなれというのか?


 それに、なんだ、その態度は……。 

 この私が頼み込んでいるのに、偉そうな態度で拒否するなんて……。

 まあ、いい、今回は水に流してやろう……、皿洗いだけに……。

 反論して、また殴られるのも嫌だし……。


 私はその後も、黙々と皿洗いを続けた。


 とにかく今は、皿洗いを極めることに集中しよう。

 ……いや、それは無理だ。

 同じ作業の繰り返しで、皿洗いには飽きてしまった。

 やはり、料理を作ってみたい。


 ……許可は得ていないが、料理を作ってみるか。


 これで美味しい料理を作ることができたら、私のことも見直してくれるはずだ……。

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