第14話
(※ヘレン視点)
私は殿下と一緒に、王宮から街へ出掛けていた。
現在は、仕立て屋を訪ねていた。
ここは、王家御用達の仕立て屋で、殿下が私のために、新しい衣装を発注してくれたのだ。
今日は、そのための採寸に来ていた。
「あぁ、楽しみですわ。いったい、どんな衣装に仕上がるのかしら……」
私は自然と笑顔になっていた。
一時はどうなるかと思ったけれど、あれ以降、殿下との関係に亀裂が入るような事態にはなっていない。
あの出来事が夢だったのではないかと思うほど、今では殿下との幸せな毎日が続いている。
「素敵な君なら、どんな衣装でも似合うよ」
殿下が微笑みながら言った。
「そうだ……、せっかく来たのだから、この辺にあるドレスを、着てみたらどうだい?」
「いいんですか? じゃあ、これとか、どうかしら……」
いくつかドレスがあったので、私はその中から一つを選んで試着してみた。
「いいね……、すごく似合っているよ」
「ありがとうございます。そう言って頂けて、嬉しいですわ」
「あと、これなんて、どうかな? 君に良く似合うと思うよ」
殿下が手に取ったドレスは確かにきれいだった。
しかし、装飾が私の好みではなかった。
「確かに、素敵なドレスですね。でも、私には少し、可愛すぎると思います。お姉さまなら、好んで着そうですけれどね」
「……え?」
「え……、どうしたのですか?」
殿下の表情が急変したので、私は驚いた。
「お姉さま? 何を言っているんだ? お姉さんなのは、エマ、君だろう?」
ようやく、自分が口走ってしまったことに気が付いた。
体中に緊張が走り、冷や汗が止まらなかった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます