颯真と理央奈の言葉のバトル

再び無人の会社での会議室にて。超ブラコンの青年と、甘やかされて育った超わがままな社長令嬢との言葉のバトルが勃発した。


ものの十数分もたたないうちに、喧嘩になる2人であった。颯真は兄である颯一郎に、理央奈は父親である大内啓司に、説教混じりで長時間、説得されたにもかかわらず、である。


「颯一郎さんは私の夫であり、私は颯一郎さんの妻なのよ?あなたは弟としてもっと気を使い、おとなしく身を引くべきよ!」


「うるさい、うるさいうるさい!兄さんは僕を生涯守ると誓ったんだ。兄さんと僕は切っても切れない仲なんだ。そこへお前みたいなくだらない女が、ずうずうしく割り込んできただけだろうが。お前こそ早く出て行け。この口汚いクソ女め。さっさと別れてしまえ!」


「よくも言ったわねぇ!この気色悪いブラコン男が!別れるものですか!颯一郎さんほどの優良物件はなかなか見つからないのよ!あんたみたいな顔も頭も平々凡々な男だったら、ゴロゴロいるけどね!」


痛いところをつかれてうろたえる颯真。彼は何か言い返そうと試みたが、うまくいかなかった。幼い頃からことあるたびに、出来のよすぎる兄と比較され、心に深い傷を負ってきた颯真にとって、聞き捨てならない暴言であった。


幼い頃から抱えてきた、容姿端麗かつ才気煥発である兄との、周囲の心ない比較によって、深い傷を負った颯真。それは、彼の内面に根付き、時に彼の言葉や行動を牽制する諸悪の根源となっていた。


そして、彼がその内面の傷を漏らした瞬間、社長令嬢は彼の弱点を見透かしたような言葉を投げかけた。それは彼にとって、聞き捨てならない暴言であり、彼を更に追い詰めることとなった。


颯真は、顔を歪めた。悪口雑言を聞くたび、彼は自分が何者であるかを見失いそうになった。理央奈は完全に颯真を見下していた。そして、颯真の内面を暴き出したかのように、容赦なく彼に冷たい視線を送り続けた。彼は彼女が自分を侮蔑しきっていることに、耐えられなかったのである...

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兄の罪と弟の罰 大久保伊織 @ohkubo_iori

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