関本の声真似の謎
永田の自宅前
「御協力ありがとうございます。早速なんですが、昨日の状況を改めて説明して頂けますか?」
「はい。昨日の7時頃、安藤さんから会って話がしたいと電話があったんです。営業の話だと思い、喜んで会う約束をしました。ここのアパートまで来てくれるって言うので待っていたんです。近くのホテルにいると言っていたので、30分ぐらいで着くのかと思っていたんですが、1時間経っても来ないので、迷ったのかと思いました。たしか、安藤さんがここに来たのは1度だけでしたし、結構入り組んでますしね……。それで、電話を掛けたんですが……」
「なるほど……。ちょっとこの音声を確認して頂いていいですか?」
小牧はレコーダーを再生させた。
「お疲れ様です」
「ああ、お疲れ」
「どうかされました?」
「ちょっと振り込みをお願いできるか?」
「かしこまりました」
「株式会社ルートエルへ1億円で」
「えっ!? 1億円ですか?」
「そうや、宜しくな」
それを聞いて永田は話す。
「関本さんと安藤さんの会話ですね。これがどうかしましたか?」
小牧と日吉は顔を見合わす。永田は続けて話す。
「これが、安藤さんが亡くなった事と関係あるんですか?」
「いえ、これは別件なんです。もしかすると関係あるかも知れないと思ったのですが……。安藤さんは、この関本さんの声が永田さんの声真似じゃないかと睨んだのでは? と思いまして……」
「いや、私じゃないですね。こんなにそっくりに声真似出来ないです。そもそも、これが私だったら何か解決するんですか?」
「そうですよね……」
小牧は何も言い返せなかった。それもその筈、自分達も永田の声真似は2流だと言っていたのだから……。「この声がお前だったら、お前の詐欺が立証出来て、安藤殺害の動機にもなるんだよ!」と言ってやりたかったが、証拠が無いのにそんな事を言っても仕方が無かった。
「ではまた、御協力お願いするかも知れません。その時は宜しくお願いします」
「分かりました。御苦労様です」
小牧と日吉はパトカーに乗り込み、警察署へ向かう。日吉は運転をしながら小牧に話し掛ける。
「小牧さん、永田の事どう思いますか?」
「う~ん。怪しいのは怪しいが、永田が犯人だと仮定すると不自然な事があるしな。俺が永田の立場だったら、まずスマホを捨てる。襲われる前後に電話をしていたとなると、間違い無く最有力の容疑者になってしまうからな」
「そうですね、何かスマホを捨てられない事情でもあったんでしょうか? 見つけられなかったとか?」
「そんな事は無い筈だ。スマホはスーツのポケットに入っていて、見つけられないという事もない。財布は何処にあったのか分からないが、財布を探す時間があればスマホも見つけるだろう」
「そうですね。でも、わざと物取りの犯行に見せ掛ける為に財布だけ抜き取ったって可能性は無いですか?」
「その可能性がゼロという訳では無いが、低いだろうな。最有力の容疑者になってまで物取りの犯行に見せ掛けるってのはリスクが大きすぎる」
「そうですよね」
「さらに、安藤のスマホには詐欺師との会話が録音されている。永田と詐欺師と殺人犯がイコールだとすると絶対にスマホは捨てるべきだ。永田は安藤の性格をそこそこ知っていた筈だから、永田が詐欺師だったなら、自分の声が安藤のスマホに録音されているのが分かっているんだしな。そう考えると、永田が殺人犯という説はかなり無理がある」
「そうですね……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます