安藤の死

土曜日午後9時

男性が頭から血を流して倒れているとの通報を受け、現場に警察官が駆けつけた。殺人事件という事で、小牧と日吉にも連絡が入り、駆けつける。

現場の警察官が小牧と日吉に話す。

「死因は後頭部を鈍器で何度か殴られた事による脳挫傷と見られます。凶器は今のところ見つかっていません。所持品の名刺から、恐らく被害者は株式会社エスソースの秘書、安藤大翔さんだと思われます」


一通り話を聞いた後、日吉が小牧に話し掛けた。

「物取りの犯行ですかね? 財布だけが捕られているようですし……」

「そうだな、スマホを取らないという事は、身近な人物じゃない可能性が高い。もちろん、怨恨えんこんの可能性が消えた訳では無いが……」

「この辺りは防犯カメラも無いので、物取りだと犯人を捕まえるのは厳しいですね」

「大通りに逃げてくれれば、多少、防犯カメラもあるんだが……」

「取り敢えずスマホの履歴を調査ですね」

「そうだな。エスソースと言えば、関本が社長の会社だったな。スマホの調査が終わる前に関本に話を聞いておこう」



午後10時、某ホテル

小牧と日吉は、関本が泊まっているホテルにやって来た。

「夜分に御協力ありがとうございます。関本さんは今日、安藤さんと御一緒だったんですよね?」

「そうや、仕事を終えて一緒にこのホテルに来たんや」

「それからは?」

「その後は会っとらんな」

「何か安藤さんに気になるところはありませんでしたか?」

「……」

「!」

小牧は職業柄、関本のリアクションで何か違和感を覚えた。

「関本さん、何か知っていますね? 隠すと損をしますよ?」

「いや、事件と関係無いかも知れんのやが、どうも詐欺にあったみたいなんや」

「詐欺? おいくらですか?」

「1億円や」

「1億!」

話を聞いていた日吉が声を荒げた。

「それで、詐欺犯はもちろん分からないんですよね?」

「ああ。やが、安藤は永田が怪しいとにらんでいたんや」

「ナガタというのはお知り合いですか?」

「モノマネタレントの永田や、知らんわな?」

「モノマネ新人王の永田ですか?」

「そうや、よく知っとるな。まあ、ワイはそんな事は無いと思っとるんやが、安藤は永田を疑っとったな」

「何か永田を疑う理由があったと言うんですか?」

「ワイの声真似をした詐欺師が安藤のスマホに連絡してきたんや。安藤のスマホを調べたら分かるんちゃうか? あまりにソックリやったから、ワイも安藤も永田や無いと思っとったんやがな」



翌日、日曜日午前10時

「小牧さん、電話会社から連絡が入りました」

「そうか、どうだった?」

「関本の言う通り、被害者安藤と事件の直前直後に永田が電話をしていました。その後、2度、永田から被害者安藤に着信がありますが、亡くなった後のようで電話には出られていません」

「なるほど、怪しいな。だが、永田が犯人ならスマホを捨てそうなもんだが……。そんな単純には解決しないかも知れんな」

「早速、話を聞きに行きますか?」

「もちろんだ」

日吉は永田に電話を掛けた。

「もしもし? どちら様ですか?」

「もしもし、永田さんですか? 警察官の日吉と申します」

「警察?! どうかされましたか?」

「安藤大翔さんって御存知ですよね?」

「ええ、仕事でお世話になっている方ですが……」

「安藤さんが昨夜亡くなりました」

「えっ?! 病気ですか?!」

「いえ、路上で襲われた様なんです」

「襲わ……そんな……昨日、会う約束をしていたところなんです」

「ですよね。スマホの発信と着信の履歴に永田さんの名前がありました」

「はい。連絡がつかないので、どうしたんだろうと思っていたのですが……」

「今から御自宅へ伺っても宜しいでしょうか?」

「はい。大丈夫です」

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