ヒーロー登場

舞は、野々村が自分に尾行をつけるのでは無いかと予想していた。自分では見つける事が出来なかったが、母に事情を話し、ストーカーではなく、警察が護衛の為、尾行してくれている事を説明していた。そして、母に、かなり遠目から自分の尾行を頼んだところ、尾行をしている日吉がいたと確認できた。

舞は、日吉がいつも張っている場所に目をやったが日吉は居ない! 誰か呼ばないと、と考えたが、その時浮かんだのは皮肉にも木村の顔だった。

舞は外出する時、低めのヒールをよく履いていたが、念の為、今日はスニーカーを履いていた。しかし、これがアドレナリンの出まくった男性と女性の差なのか、ビックリするぐらい一瞬で木村に追い付かれた。

舞は叫ぼうとしたが声が出ない。木村に右肩を掴まれた。殺されると思った瞬間!

「ぐえっ!!」

ドサッ……

「ぐうう……」

「!?」

木村が吹っ飛んだ。日吉の右ボディーが木村の脇腹に突き刺さったのだ。それを見ていた野々村が言う。

「素人を殴ったな。よし、プロボクサーライセンスを剥奪はくだつしろ」

「冗談言ってる場合じゃ無いですよ!」

日吉は強めに突っ込んだ。

「愛した女を鬼の様な形相で追いかけるとは……」

小牧も遅れてやってきて呟いた。舞はペタンと座り込み、日吉の足にしがみついた。


その後、もう1台のパトカーが来て木村に手錠を掛け連れていった。木村は肋骨が折れているようで、病院へ連れていかれるようだ。



警察署

野々村は日吉に言う。

「しかし、完璧なタイミングだったな。お前掴まるまで待ってただろ?」

「バカ言わないでくださいよ。そんな余裕無いですよ!」

「日吉さんが掴まるまで待ったせいで殺されるかと思いましたよ、ふふふ」

「舞さんまで何言ってんの!」

「でも、木村さん、いつになるか分からないですけど、出所したら襲って来そうで恐いですよ。トラウマになりそう」

それを聞いていた小牧がニヤニヤしながら言う。

「また、日吉に護衛させましょうか? 腕力だけは頼りになりますよ」

「腕力だけか~、ふふふ」

「一言余計なんですよ」

「でも、なんか失恋した感じもあって複雑ですね」

更に小牧がニヤニヤしながら言う。

「日吉なんかどうですか? オススメですよ、顔は不細工だけど」

「だから、一言余計なんですよ!」

「あっ、モリカズのモノマネマスクそこに有りますよ」

そこに木村から押収したモノマネマスクが6人分あるのに舞が気付いて言った。日吉はモリカズのマスクを手に取りモノマネする。

「助けに参りました、お嬢様の仰せのままに」

「キャー、カッコ良い~。でも、全然似てな~い! ふふふ」



翌日

舞が朝起きてテレビをつけると、ハッピーモーニングが始まったところだった。司会の三浦アナが映されると、舞は木村の事を思い出してしまったので、チャンネルを変えようとした。だが、衝撃のニュースに聞き入ってしまった。


「今朝のトップニュースです。昨夜、婦女暴行未遂容疑で逮捕された、元モノマネタレントの木村一郎容疑者が病院から抜け出し、現在も逃走中です」



「ハァ……ハァ……ハァ……痛ぇ……」

「木村は肋骨が折れているんだぞ! そう遠くへは逃げられない筈だ!」

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