木村からの電話

舞は4時半に中谷からモノマネマスクを受けとる約束をしていたので、仕事を終え、電車に乗って、中谷の会社へ向かいながら、電車の中でスマホのネットニュースを見る。舞は、木村が詐欺グループの一味として疑われ、大変な事になっていると知った。

電車を降り、中谷の会社近くまで行くと、中谷が外で待ってくれていた。

「舞ちゃん! 木村さん大丈夫なの?」

中谷も木村の状況を知っている様子だ。

「分からないです。取り敢えず、モノマネマスクは依頼されたので貰いに来たんですけど……」

「この状況だと、当分使われないかもな」

「お金を……」

「そうだね、受領書に名前お願い出来るかな」

舞は受領書に名前を書く。

「……」

「大丈夫? 舞ちゃんも大変そうだけど……」

「そうですね、私がしっかりしないと」

「舞ちゃんは元気じゃないと似合わないよ」

「ありがとう。頑張ります」

「木村さん支えてあげて」


舞は中谷と別れ、駅へ戻る途中、スマホが鳴った。ディスプレイには木村一郎と表示されている。

「もしもし、木村さん?!」

「舞ちゃん、ニュースで知ってるかな? 今、大変な事になってて……」

「知ってます」

「仕事全てキャンセルになっちゃったんだ。夜は会見の打ち合わせとか忙しいんだけど、今から会えないかな?」

「大丈夫ですよ」

「ゆっくりデートがしたかったけど、そういう訳にはいかないんだ」

「分かります。『桜の花』でどうですか?」

「分かった。30分後に行くよ」



その頃、舞を尾行している日吉から小牧に電話が掛かってきた。

「お疲れ様です」

「どうだ? 動きはあったか?」

「いえ、特には……。知り合いに会いに行っていたようです。今、自宅に着きました」

「そうか……。まあ、木村も今は大変な状況だからな、女と会っている場合じゃ無いだろ」

「そうですね……。ん?」

「どうかしたか?」

「タクシーが停まりました。木村かも知れません」

「!!」

「木村です! どうしましょう?」

「大丈夫だ、舞さんに危害を加えるような事は無い。そのまま状況を伝えてくれ」

小牧はオンフックボタンをタッチした。

「承知しました」

小牧は野々村に話す。

「野々村さん、木村が舞さんに接触しました」

「そうか、取り敢えず近くまで行くか。舞さんが木村を突き詰めて、逆上する可能性もゼロでは無いからな」

日吉が話す。

「木村も『桜の花』に入りました」

「木村が去った後、舞さんに接触してみよう」

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