刑事野々村①

木村は目を覚まし、横になったまま目覚まし時計を見ると、時刻は昼の1時を少し過ぎていた。瞼が重く、疲れが全くとれていない。まだ眠いのに何故、目が覚めてしまったのか疑問に思っているところ……。

ピンポーン

呼び鈴が鳴った。木村は2度目の呼び鈴だったという事に気付く。

ピンポーン

3度目の呼び鈴が鳴り、木村は何とか起き上がる。パジャマのまま玄関まで向かい、ドアを開ける。

「こんにちは、御迷惑お掛けします」

警察官の日吉だ。後ろには、小牧ともう1人知らない男が少しビックリした顔で立っている。180センチぐらいの高身長で恰幅の良い体型。年齢は40歳ぐらいに見える。そこそこの2枚目で、少し長めの天然パーマの真っ黒な髪をオールバックにしている。

「どうしました?」

木村は突然の警察官訪問に少し焦ったが、米山の死亡について、いつか聞きに来るだろうというのは想定内だった。

「初めまして、野々村と申します。この度は数々のご迷惑申し訳ありません。米山の件について、少しお話宜しいでしょうか?」

「分かりました。準備しますんで、20分程お待ち頂けますか?」

「承知しました」

木村は玄関のドアを閉めると、洗面台へ行き、顔を洗い、歯を磨きながら考える。

(大丈夫だ。何も証拠は残していない筈だ。連絡は米山のスマホからしたし、あいつのスマホは池へ捨てた。俺は、ただの重要参考人だ)

木村は自分に言い聞かせると、準備を済ませ玄関を出た。

「お待たせしました」

木村を確認して、野々村は話し掛ける。

「何処か近くに、ゆっくりお話出来る場所ありますか?」

「そういえば、米山と行った個室のある喫茶店があるんですよ。車でちょっと行かないといけないですが、駐車場も広かったし、そこはどうですか? 確か……『ひまわり』……だったかな? ちょっと調べてみます」

木村はスマホで調べる。

「あった。『ひまわり』で正解でした」

木村は野々村にスマホを見せる。

「ここなんですけど、どうですか?」

「米山と行った事があるなら何か手掛かりが有るかも知れませんね。そこにしましょう。日吉!」

野々村は日吉を呼ぶ。日吉がスマホを覗く。

「大丈夫です。通った事あります」

「木村さん。では、参りましょう」



『ひまわり』に着き、広い駐車場に日吉は車を停めた。時間的な問題なのか、他に車は2台だけだ。

喫茶『ひまわり』の看板を見ると、また少しずれていたので、木村は前回同様、強引に直した。他の3人は、それを不審に思いながらも木村の様子を見ている。そして、4人は店内に入る。

「いらっしゃいませ。4名様ですか?」

木村が返事をする。

「はい、個室空いてます?」

店員は少しだけビクッとしたが、冷静に対応する。木村を見るのは2度目の為、免疫がついたようだ。

「大丈夫です。御案内します」

個室にどれだけ人がいるかは分からないが、端のテーブル席におばちゃん4人組がいる。

(流石に前のおばちゃん達じゃないよね?)

『ダンデライオン』のおばちゃんと同じメンバーだと言われても全く分からない。

店員は席を案内した後、厨房へ戻り、水の入ったグラスを持ってきた。木村は店員に注文する。

「え~っと、サンドイッチセット1つをロイヤルミルクティーホットで、あと……」

木村は野々村の方を見る。

「ホットコーヒーブラックで3つ」

野々村は小牧と日吉に確認も取らずに店員へ告げた。

「かしこまりました」

店員がその場を離れると、野々村が立ち上がり日吉に言う。

「日吉、木村さんと世間話でもしといてくれ、小牧、ちょっと店員に話を聞きに行こう」

「はい!」

野々村と小牧は席を立った。

野々村は店員に話し掛ける。

「店員さん、お忙しいところすみません。警察なんですが、少しお話良いですか?」

「警察? 何でしょう?」

「この写真の男を御存知ですか?」

野々村は米山の写真を見せた。

「ああ、米山さんですね。常連さんですよ。どうかされました?」

「驚かないで聞いてください。実は、昨日亡くなりまして……」

「えっ?!」

店員は口を押さえ驚きを噛み殺した。

「自殺と他殺、両方の線で捜査してるんですが、何か情報をお持ちでないかと思いまして……」

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