米山死亡

30分後

野々村から小牧に電話が掛かってきた。

「もしもし? どうでした?」

「……死んでいた……」

「は? 米山がですか?」

「そうだ。今、上に報告した」

「やっぱり単独で行動されてたんですね」

「そうだ」

「で、死因は?」

「出血死だ。背中を包丁で刺されている。いや、背中に包丁が刺さっている」

「……と言う事は、自殺の可能性も否定できないと言う事ですね?」

「そうだ、包丁を立てて後ろ向きに倒れれば、自殺も出来る。あとは、包丁に指紋が残っているかだが……」

「取り敢えず、鑑識を待たないと分からないですね」

「注目を集めて、それから死んだと言う事は、やはり自殺が本命だな。詐欺師だから恨まれる要因は有り余る程あるが、日吉への電話の後に殺されるような偶然は、ほぼゼロだからな」

「そうですね」



翌日

小牧は野々村に話し掛ける。

「野々村さん! 鑑識の結果が出たようですよ」

「どうだった?」

「1番謎なのは、包丁に指紋が付いていないんです」

「指紋が付いていない? 米山は手袋をしていなかった。となると他殺じゃないか? 日吉に電話があって、俺が辿り着くまでに40分位だと思うが、その間に誰かに殺されたって言うのか? 無理過ぎるだろ」

「あと、手にマスクを握ってたんです」

「マスク? 気付かなかったな。それなら、マスクで指紋をつけないようにする事が出来るかもな。発信履歴はあったのか?」

「それが……スマホは何処にも見当たらなかったんです」

「まあ、あんなもの海に投げ捨てれば終わりだしな。所持品は? 金は? 強盗の可能性は?」

「金は自宅に1,000万円以上ありました」

「そうか……自殺が本命だとは思うが、結局のところ分からない。流石は3日やそこらで1,000万円以上騙し取った詐欺師だな、訳の分からない死に方をする。それとも……他殺なのか?」



木村の自宅

「これでようやくグッスリ眠れるな」

木村はそうつぶやいて、返り血の付いたシャツをバスタブに投げ入れると、ライターを近付けて火を点けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る