刑事、日吉と小牧

翌日

朝早い時間だったが、刑事日吉に電話が掛かってきた。知らない番号のようだ。

「もしもし?」

「やあ、日吉さん」

「どなたですか?」

「自分が逃がした男の声も覚えてないんですか? まあ、貴方とは話をしてませんけど」

日吉は職業柄、直ぐに録音をタッチ出来た。

「お前米山か? 何故、電話番号を知ってる?」

「貴方、ボクシングで結構有名なんですね。警察官ボクサーって中々いないですもんね。調べたら電話番号が出回ってましたよ」

「それは良いとして俺に何か用があるのか? 出頭する気にでもなったのか?」

「ハハハ、御冗談を。木村を連れて来て欲しいんですよ。あいつだけは許せない。岬に廃工場が有りますよね? そこに1時間後集合で、では」

「待て、1時間後って、それは……」

電話を切られた。ここから廃工場まで、車で急いでも40分ぐらい掛かる。

日吉は先輩小牧に電話を掛ける。

「もしもし」

「お疲れ様です」

「どうした? こんな早くから」

「米山から電話があったんですよ」

「何だって?! 内容は?」

「木村を連れて、岬の廃工場へ来いとの事です」

「木村を連れて?」

「やはり逆恨みしているようです」

「取り敢えず、車で迎えに来てくれ。俺は木村に連絡する」

「承知しました」

小牧は木村に電話を掛ける。

「もしもし?」

木村が電話に出た。小牧は木村が生きていたのでホッとした。

「警察官の小牧です。昨日はご迷惑お掛けしました。今、御自宅ですか?」

「そうですが、御用件は?」

「昨日逃げた米山から連絡があったんですよ」

「米山から連絡が?!」

「で、木村さんを逆恨みしているようなので、今から護衛に参ります」

「了解しました」

「では、後程」

小牧は電話を切った。


ピンポーン

「小牧さーん」

日吉が小牧の自宅に着いたようだ。

「今行く」

小牧はトレードマークのオールバックにする間も無く、自宅を飛び出した。日吉も同じで、ボサボサの頭をセットせず、無精髭が生えている。

2人は日吉の車に乗り込んだ。

「木村のアパートへ」

「承知しました」

小牧は日吉の車に乗り込むと、直ぐに上司野々村へ電話を掛けた。

「もしもし?」

「野々村さん、お疲れ様です、小牧です」

「どうかしたか?」

「昨日逃がした米山から日吉へ連絡があったようなんです」

「何だって? 用件は?」

「木村を連れて、50分以内に岬の廃工場へ来いとの事です」

「分かった。上に連絡しておく。お前達は木村の所へ向かってるのか?」

「そうです」

「よし。お前達は木村を護衛しろ。俺達が廃工場に向かう」

「承知しました」


2人は木村の自宅に到着した。急いで車を降りる。

ピンポーン

「木村さーん」

ガチャ

「わざわざ、護衛ありがとうございます。」

「いえいえ、こちらこそ色々御迷惑をお掛けしてます。そうだ、日吉、電話を再生できるか?」

「分かりました」

「ちょっと、待て。再生している時に、米山から電話が掛かってきたら出られるのか?」

「大丈夫です。出られます」

「よし。再生だ」

男の声が再生された。日吉は小牧に伺う。

「どうですか?」

「似ているように聞こえる。が、俺は少し聞いただけだから……。木村さんどうですか?」

「間違いなく本人です」

「やはり、そうか。狙いは何だ?」

「もちろん、木村さんが狙いでは?」

「いや、そんな訳は無い。一応護衛には来たが、本当に木村さん狙いであれば、宣言なんてしない」

「じゃあ、狙いは?」

「もし、俺達や警察が狙いなら、廃工場に集めて爆発とかさせれば一網打尽にできる」

「なるほど」

「まあ、俺なら注意を廃工場に集めて、海外へ逃げるかな。あいつは1,000万以上の金を持っている」

「なるほど。それが本命ですかね」

「もちろん、野々村さんは、その辺を分かってくれている。爆破の可能性も少しあるが、危険を冒してくれているし、空港の警戒は解かないはず。だから、最小限の人数で行っているだろう。上に連絡すると言っていたが、単独行動かも知れない。野々村さんはそういう人だ」

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