神経質
小牧は木村に話す。
「木村さん、私の連絡先教えておきます。まさか、無いとは思いますけど、逆恨みで襲われたりする事も稀にありますから」
「ありがとうございます」
(そうだ、舞ちゃんに連絡しないと)
木村は小牧達警察官と別れ、舞に電話を掛ける。
「もしもし、舞ちゃん?」
「木村さん、どうなりました? 偽プロデューサー捕まりました?」
「それが……残念な事に逃げられたんだよ」
「えっ? 逃げられた?! どういう事?」
「2階から飛び降りて逃げたんだよ」
「容疑者に2回も逃げられるって……。減給は避けられないんじゃない?」
「ほんとだね」
「木村さんの祝勝会も出来ずに変な揉め事に巻き込まれちゃいましたね」
「ほんと、そうだね。でも、今回の件は舞ちゃんに助けられたよ。今頃、冤罪で刑務所行きだったかも」
「まあ、それは良かったですけど……」
「米山が逃げたのがなあ……。俺、気になったら眠れないタイプだから」
「そうなんですね」
「ちょっと、1人でゆっくり休みたい。気分が晴れたら、またデートしてくれるかな?」
「もちろんです! 色々大変でしたもんね。ゆっくり休んでください」
舞は米山を逃がしたのは警察のせいだと思っているようだが、9割方木村のミスだ。余計な事を言わなければ小牧と周りの警察官で取り抑えていただろう。
夜11時
木村は寝る準備をして、自宅のベッドに入り、目を瞑って今日1日を振り返る。
(本当に舞ちゃんには助けられてばっかりだ。あの子がいなかったら、今頃、脱走犯扱いをされて逃げ回っていたかも知れない。そんな事より米山が問題だ。まさか、あの状態から逃げ切るだなんて……。陸上の元日本チャンピオンだって? そんな偶然があるなんて運が無さ過ぎる。絶対捕まると思って、調子に乗り米山を挑発してしまった……。まだ、捕まって無いのだろうか……。まさか、俺を殺しに来たりしないだろうな……)
誰でも、1人ぐらいには恨みを持たれた事があるだろう。金銭トラブルだったり、恋愛トラブルだったり、仕事のトラブルだったり……。神経質な人なら、自分を殺しに来るかも、とまで思った事があるかも知れない。だが、実際にはそんな事は起こらない。何故なら、相手は普通の人だから……。普通の人であれば、殺してやる! と思っても、実際には殺したりはしない。だが、米山はもう普通の人では無い。特殊詐欺の実行犯として、指名手配されているのだから……。そんな人物から恨みを買うと何をされるか分からない。木村は早く捕まってくれ、と願っていたが、今のところ、そのようなニュースは無い。殺しに来るかも知れないという恐怖と、元々の神経質な性格との相乗効果で、予想通り、眠りにつけなかった。
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