刑事野々村②

席では日吉と木村が会話をしていた。

「木村さん、車から逃げ出すやつ凄かったですね。小牧さんの声としか思えなかったですよ」

「小牧さんの電話から掛かってきたら、誰だってそう思いますよね」

「あの後、どうやって米山のオフィスまで行ったんですか? 駅も見張ってたんですけどね」

「『ダンデライオン』って喫茶店分かります? あそこに取り敢えず隠れて、舞ちゃんって友達呼んで、彼女のお母さんに車で送ってもらったんですよ」

「舞ちゃん? 彼女さんですか?」

「いえ。最近、仲の良い友達です」

「へ~、そうなんですね」


野々村と小牧が帰って来た。遅れて店員もやってくる。

「コーヒーブラック3つとロイヤルミルクティーとサンドイッチお持ちしました」

店員が離れると、日吉が野々村を見て話す。

「どうでした?」

「いや、駄目だ。常連だったみたいだが、他に情報は無いな」

「そうですか……」

それを聞いていた木村が野々村へ話し掛ける。

「ちょっと良いですか?」

「何でしょう?」

「最初のオーディションで私に声を掛けてきた男がいたんです。米山はその男に紹介してもらったんです」

「なるほど」

「ただ、その男とは、それ以降出会っていないので、仲間って訳では無いかも……」

「なるほど、受け子かも知れないな。会ってみる価値はある。その時のオーディションについて教えてもらえますか?」


木村から最初のオーディションの話を教えて貰った後、野々村達は木村を家まで送り届けた。野々村は木村に話す。

「今日は御協力ありがとうございました」

「いえいえ、いつでも協力します」

「ありがとうございます。宜しくお願いします」


木村と別れた後、日吉は野々村に話す。

「木村との話で収穫がありました」

「何だ?」

「木村には、舞ちゃんという親友の女性がいるようです」

「そうか、なんとか連絡をとりたいな。木村から聞き出しても良いんだが……」

「『ダンデライオン』って喫茶店に木村と舞ちゃんって子が行っているようです。そこの店員に話を聞いてからでも良いかもしれません」

「そうだな、オーディション担当者と連絡を取るのは、その後にしよう」


3人は車に乗り込み、日吉の運転で『ダンデライオン』に着いた。


「いらっしゃいませ。3名様ですか?」

野々村は店員に話す。

「すみません、警察のものですが……」

「はい?」

「舞さんって子を御存知ですか?」

「舞ちゃんって『桜の花』の?」

「!」

「先日も来てましたよ。何か変な雰囲気でしたけど……。警察と関係があるんですか?」

「いや、舞さんは関係ないんだが……情報が欲しいんです。『桜の花』ってのは、お店ですか?」

「はい、定食屋さんです。お店の場所は……」


情報を得た3人は店を出た。小牧が野々村に話す。

「木村の家から近いですね」

「木村に見つかったらダメな訳では無いが、歩いて行こうか。この店に車を停めておくと迷惑になるんで、違う場所に停めて歩いて『桜の花』へ移動しよう」

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