モノマネ新人王
翌日、午後7時
「第4回モノマネバトルー!!」
生放送が始まった。3時間の生放送で最初と最後は、プロのトーナメント、中間に新人10名による新人王決定戦がある。優勝賞金30万円だ。
そして新人王決定戦が始まった。
「Y o! Y o! ヒップでポップな1分間! Y o! 突き指するから避けて!」
「わはは!」「そっくり~!」
「お嬢様の仰せのままに」
「キャー、カッコ良い!」「似てる~」
司会者が木村に話し掛ける。
「凄いですね。そっくりですね」
木村はモリカズのマスクをつけたまま、モリカズの声真似で応対する。素顔を見せて、観客に引かれると面倒だからだ。審査員も木村に話し掛ける。
「他にもモノマネ出来る方いるんですか?」
「第4回モノマネバトルー!!」
木村は司会者の声真似をして言った。
「えー! 凄いですねー!」
審査員も驚く。
「そんな事ないですよー!」
木村は審査員の声真似をして言った。
「似てる~!」
観客から歓声が飛ぶ。
「男の人なら直ぐに声真似できます」
「凄いですね。これからブレイク間違いなしですよ!」
そして、結果は……
「新人王チャンピオンは……木村一郎さんです!」
優勝報告を舞にしたかったが、放送終了後、いろんな人から祝福され、所属先等色々話があり、テレビ局を出る時には24時を回っていた。舞から着信もあったが、報告はちょっと出来そうに無い。起きてからにしようと木村は思った。
勿論終電は終わっていて、テレビ局から家までタクシーで1時間ぐらい掛かったが、タクシー代はテレビ局が出してくれた。
翌日
起きると午後3時を回っていた。10時間以上寝ていたようだ。緊張や疲労で相当疲れていたという事だろう。取り敢えず外へ出る準備まで終えたところで……
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。木村はゆっくりと玄関に向かい、ドアを開けるとガタイのいいスーツの男性が2人立っていて、木村の顔を見るなり少しのけぞった。初対面の時、木村の顔を見た人の反応は大体同じだ。木村は何かの営業で訪れた上司と部下だと感じた。
上司であろう男性は30代前半に見え、中背で恰幅が良く胸板がかなり厚い。パワー系のスポーツをやっていたのだろうか? 真っ黒な短髪をオールバックにしており、強面という印象だ。
部下であろう男性は少しだけ背が高く、20代半ばに見える。刈り上げられた短髪の黒髪で、少しだけ顎髭が伸びている。眉毛はつり上がるように整えているがタレ目だ。色黒で、やや、すきっ歯の為か、あまり賢そうには見えない。
「はい? どちら様ですか?」
「木村一郎さんですね」
「はい」
「警察です。お話良いですか?」
「警察? 何かありました?」
「昨日のモノマネ見ました。優勝おめでとうございます」
「ありがとうございます」
木村は警察と聞いて警戒していたが、おめでとう、というワードが出たので笑顔で対応する。
「木村さんは聞いた声を直ぐに真似できるそうですが本当ですか?」
「木村さんは聞いた声を直ぐに真似出来るそうですが本当ですか?」
木村は上司っぽい警察官の言った言葉を、おうむ返しでモノマネした。
「おお~」「お~、本当だったんですね」
部下っぽい警察官は、生で新人王のモノマネを見れたからなのか興奮しているようだ。上司っぽい警察官も、強面の表情が崩れて驚きの表情に変わった。
「それで、何か協力出来る事はありますか?」
「協力というか、詐欺罪の容疑が掛かってます」
上司っぽい警察官は真剣な表情に戻って話した。
「はあ? 全く身に覚えが無いんですが……」
「最近、お年寄りからお金を騙しとる犯罪が多発してるのは、御存知ですよね?」
「オレオレ詐欺みたいなやつですか?」
「そうです。声紋鑑定の結果、そのグループの1人があなただという結果が出ています」
「はあ?」
「任意同行頂けますか? 署でお話しましょう」
「まあ、いいですけど……」
(何だか変な展開になってきたな。オレオレ詐欺? 確かに、老人に孫がいたとして、その人の声真似は出来るから俺なら簡単に可能ではあるけど、それだけで犯人扱いするのはちょっと無理なんじゃないか? 声紋鑑定がなんとかって言ってたな。 いや、よく分からない。でも冤罪ってなかなか解放してもらえないって聞いた事があるけど……)
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