モノマネマスク
話に夢中になっていて気付かなかったが、2人は既に駅に着いていた。木村は続けて話す。
「デートプラン決めずに駅に着いちゃったね」
「そうですね」
「ゆっくり話できる場所とかがいいね」
「公園とかどうですか? 歩きながら公園探しますか?」
「良いね」
「デートプランより木村さんのモノマネプランの方が面白いです」
「考えてくれる?」
「そういうの考えるの大好きです」
2人は駅から離れるように歩きだした。
「ありがたいね。そう言えば、オーディションの時に、誇張した方が面白いって言われたんだけど、誇張とか出来なくて……」
「元々、誇張してる人の真似すれば良いんじゃないですか?」
「どういう事?」
「お笑いの人の真似とかどうですか? ああいう人ってそもそも誇張してるじゃないですか」
「!!」
「今だったら、何とか豊って人の……」
「 Y o! Y o ! ヒップでポップな1分間! Y o!」
「それです、しかもそっくり!」
「リターンエース豊だね」
「そうです。どうですか? はなからテンション高いし誇張する必要が無いでしょ?」
「いやあ、凄いよ。イケると思う」
「あっ! 公園ありましたよ。ベンチもある」
「良かった。ちょっと歩き疲れたところ」
「そうですね。あっ、あそこに自動販売機もありますよ」
「じゃあ、何か買ってベンチで飲みながら話そうか」
「そうですね」
2人は自動販売機へ歩きだした。
「田中さんは何飲む? 奢るよ」
「いえ、ご飯奢って貰うんで、ここは私が払います」
「……じゃあ、奢ってもらおうかな」
木村は笑顔で答えた。俺が払うよ、と言おうとしたのだが少し考えて、言うのをやめた。どっちが正解かは相手によって異なりそうだが、田中の場合は奢って貰った方が良さそうな気がしたからだ。
2人はベンチに座った。公園といっても、砂場と滑り台があるだけの小さな場所で、他に人は居なかった。田中が話す。
「え~と、あとモノマネに必須なのはイケメン俳優よね」
「フムフム」
「モリカズとかどうですか? 決め台詞あったでしょ」
「お嬢様の仰せのままに」
「きゃ~、そっくり! そしてカッコ良い! モノマネマスクあったら、滅茶苦茶カッコいいですよ」
「いや、それ地味に
「ウソウソ、冗談ですよ。ふふふ」
「いやいや、冗談になってないし。でも、本当にモノマネマスクがあれば、黄色い声援が飛びそうだね」
「で、その2人を三浦アナウンサーでしたっけ? が紹介するんですよ」
「三浦アナでニュース読みながら紹介する感じにするんだね」
「そうですそうです。絶対オーディション受かりますよ」
田中の的確な指摘と具体的なプランのお陰で、成功への光が見えてきた。
「あとは、何とか木村さん用のモノマネマスク作成が上手くいけば良いですね」
「ああ、そうだった」
「絶対作ってもらいますね、私が作る訳じゃないから保証は出来ないですけど」
その後もモノマネについて話が続いたが、ふと回りを見ると夕焼けが綺麗に空を染めていた。木村が話す。
「いつの間にか、こんな時間。そろそろお店へ向かいましょうか」
「そうですね」
「ここからだったら、歩いて10分掛からないぐらいだと思います」
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