第6話 戸惑う心に優しい温もりを

「相変わらず、ルカの本棚は遠いねぇ」

「まあね、でもアカリの本棚もだいぶ遠いよね」

 ルカの本棚へと歩くアカリ達。だいぶ歩いて疲れてきたのか、アカリの歩く速度が段々と遅くなってきた頃、アカリがため息混じりに呟いた言葉に、ルカがクスッと笑って答えた

「私の本棚が遠いのはヒカリのせいだから。ねぇ、もう少し入り口から近くならないの?」

「さぁ、それはアカリ次第じゃないの?」

「えー……」

 アカリの質問に素っ気なく答えるヒカリに、アカリが不満そうにため息をついた。二人の会話を見ていたルカが少し遅れて歩くミナモに気づいて歩いていた足を止めた


「ミナモ君、元気ないね、どうしたの?」

 ルカに声をかけられてミナモも足を止め、抱きしめて持っていた本をぎゅっと強くつかんだ

「もしかしてミナモ、緊張してる?」

「いえ、そういうわけでは……」

 クスッと笑って話しかけるアカリに、慌てて否定すると二人の間を通り抜けていく



「着いたよ、どうぞ」

 ゆっくりと本棚の部屋の扉を開けミナモを中へと誘うと、戸惑いながらも一番最初に中へと入っていく

「お邪魔します……」

 キョロキョロと部屋の中を見渡しながら置くに入っていくミナモの後をアカリ達も入ると、広い部屋中には、空っぽな本棚がたくさん並んでいた

「なーんにもないね」

 と、静かなルカの本棚の部屋にアカリの声が響いて、ミナモが本棚の周りを歩く足音も、部屋の置くの方まで響いている

「昔書いていた本は、サクラが片付けちゃたからね」

 と、サクラをぎゅっと抱きしめながら話すと、アカリが少し驚いた顔でサクラを見た

「えー、なんで?もったいない」

「私との本を書きたいからって」

「ヒカリとは反対だね。昔の本を参考にして書かせるのに」

「それぞれ本と本棚に対する想いが違うのよ」

 近くにある本棚を見て回り戻ってきたヒカリがそう答えると、同じくモナカと一緒に本棚を見て回ってきたミナモが心配そうな顔をしてルカに話しかけた


「でも、僕の本を置いても大丈夫なんですか?」

「困った時はお互い様だよ。ほら、早く置いて遊びに行こ」

「じゃあ、ここに……」

 ミナモの不安な気持ちを解くように、微笑み答えるルカにそう言われて、入り口近くの本棚の隅っこに恐る恐る持ってきた本を数冊置いた

「大丈夫そう?」

 アカリも恐る恐るミナモに声をかけると、ガタンと本棚が大きく揺れはじめた。段々と揺れが大きくなり、少し怖くなって、後退りするミナモ。倒れそうなほど揺れるその本棚に、ルカがそっと触れると揺れが収まりだした

「ちょっと危なかったんじゃない?」

「確かに……。やっぱり置くのは……」

 すぐに揺れが止まりホッと胸を撫で下ろしながら、ルカに話しかけていると、ヒカリが本棚の周りを見渡してクスッと微笑んだ

「この本棚は大丈夫よ」

「この本棚は、って?」

 ヒカリの言葉に首をかしげながら返事をするアカリ。ミナモも不安そうにルカとサクラを交互に見ていると、アカリの質問に答えずにいるヒカリが、ルカの頭に乗りフフっと笑ってアカリを呼んだ

「さてと、そろそろ私の本棚の部屋に行きましょ。私達の本棚も掃除をしなきゃね」

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