第2話 失いたくないから

 純平くんから誘われて驚く私・・・・・・。


 私じゃなくて、暇が出来たんだったら彼女の方を誘ってあげたら良いんじゃないのかなって思ってしまった。


 携帯を片手に嬉しい気持ちと複雑な気持ちが入り乱れる。


『もしもし、純平くん暇なんだったら彼女を誘ってあげた方が良いんじゃないの?』


 とりあえず突っ込みを入れてあげる。彼女の立場だったら、何で私じゃなくて幼馴染と遊ぶわけってなると思うから。


 でも、彼の口から返ってきたのは「それは大丈夫」の一言だった。


 ・・・・・・ん、何で大丈夫なのよ!?


『ちょっと、何それ? 何で彼女のこと大丈夫なのよ!?』


 付き合ってるんだから、ほっといていい訳が無いと思うけど、純平くんと彼女の仲は一体どうなっているのだろうか?


『一応彼女には確認したよ、そしたら家族で旅行に行くって言われたんだよ。それに、幼馴染の美久とは遊ぶこと唯一公認されてるしね・・・・・・だから大丈夫なわけ』


『へー、寛大な彼女さんなんだね! なら良いよ。私の彼氏は今週は部活も塾もあって忙しくて会えないから私暇してたのよね。何処遊びに行こうか?』


『ならさ、折角だし、僕の親戚の別荘に遊びに行かない? 一泊二日・・・・・・二泊三日、三泊四日でも良いんだけど・・・・・・』


『ちょっと、無理無理無理・・・・・・いくら何でも、親に反対されると思うから絶対無理だよー』


『そんなことないよ! 僕の両親は一緒に行くこと許可出してくれたからね。父さんには間違っても手を出すなよって釘を刺すように言われたけど、僕には他に彼女が居るんだもん! そんなことないってキッパリ言ってやったよ』


 まぁ、確かに純平くんの親なら、私に対しての警戒心は無いんだろうね。


 子供の頃から私達はとても仲良しで、兄弟みたく過ごしてきたんだもん!本当の家族みたいなもんだからね。


『とりあえず、私も親に聞いてみるから、そしたらまた連絡するね』


 そもそも、彼氏とお泊まりなんて許すわけが無い家の親なんだから、聞くだけ無駄だって分かってる。


 でも、彼氏とは違って幼馴染の純平くんとは家族みたいなもんだから、お母さんに我を張るのもいいかもしれない。


 私は彼氏とデートより、純平くんと遊びに行くことの方が楽しみで、胸がドキドキしていた。


「あのさぁ、お母さんちょっと話したいことがあるんだけど」


 朝からキッチンで料理しているお母さんの元へ話をしに行った。


「うん、知ってるわよ! 純平くんと別荘に三泊四日で遊びに行くって話でしょう。それなら行ってきても良いわよ」


「えっ良いの? ってか、何でその話もう知ってるのよ!?」


「それは、朝方に純平くんがここに来て話をしてくれたからよ。親戚の叔父さんの別荘に遊びに行きたいけど、行ってもいいですかって・・・・・・しかも、しっかり条件付きでね」


「条件付き・・・・・・?」


「そうよ」


 一、嫌がる事は絶対しない。

 二、一緒にお風呂には入らない。

 三、寝室は別々にする。

 四、嫌になったらすぐ帰る。


「ほら、この紙にしっかり純平くんの直筆で書かれてるでしょ」


「本当だ! でも、私純平くんと泊まりで遊びに行くことになっちゃうんだよ。本当に良いの?」


「別に良いに決まってるでしょ! 自分から聞いてきた癖に、本当は行きたくないとかだった?」


「そうじゃないよ。違う、違うけどさ、彼氏とお泊まりだったら、絶対許してくれないじゃん・・・・・・多分条件付きでも・・・・・・だから、こんなに簡単に許可出してくれたことにちょっと驚いちゃったの」


「まぁ、そうかもしれないわね。でも、純平くんは信頼できるのよね。小さい頃からずっと一緒に過ごしてきたし、家族みたいなもんだからかな。それに、今日のこともわざわざ許可貰いに家に来たわけだしね。しっかりしてる子よね」


「そっか、お母さんありがとう」


 お母さんは絶対駄目だって言うと思っていたから、我を張ってまでお願いしようとしていたのに、そんなことせずに外泊の許可を貰えてしまった。


 純平くんとなら許可が貰えるだなんて・・・・・・幼馴染だけど、好きな人と初めての外泊・・・・・・私は楽しくて仕方なくなっていた。


『もしもし、純平くん・・・・・・許可貰えたよ、えへへ。でも、朝方家に来てこの話をしてくれてたんだね・・・・・・さっき言ってくれたら良かったじゃん』


『そんなこと一々言わ無くてもいいだろ! 僕は美久と

 一緒に出掛けたかったんだよ。だって・・・・・・す・・・・・・だから』


『えっ!? 何?』


『あ、ううん、別に何でも・・・・・・無いよ。じゃぁ、泊まりに行く準備しておいて! 夕方迎えに行くから。僕の親が親戚の家に寄るついでに送ってくれるってさ。それと、お金は必要ないから、帰りは親戚の叔父さんが送ってくれるって言ってたし、食材は別荘の冷蔵庫ん中のもの適当に使って良いって言われてるしね』


『うん、それは助かるね。ありがとう。じゃぁ準備しとくね』


 電話を切ると、急いで準備に取り掛かる。必要な物は着る服以外に化粧ポーチとヘアアイロン、それと・・・・・・ゲーム機くらいだろうか。


 夕方になるとお迎えに来てくれたので車に乗り込むと、見送りに来てくれたお母さんが包みを二つ純平くんのお母さんに手渡していた。一つは別荘の叔父さん用らしい。


 さっき買い物に言ってたのはお礼の品物を渡すためだったようだ。お母さんはしっかりしている。


「いってらっしゃい! 何かあったら連絡してね」


「うん、分かった。お母さんいってきまーす」


「今はゆっくりしてると良いよ! 少し遠いから、寝てても良いしね」


 純平くんはそう言った後、バックからゲーム機を取り出す。


「僕はゲームするけど、一緒に遊ぶ?」


「あ、うん遊ぶ。ところで、行先何処か聞いてなかったんだけど・・・・・・少し遠い場所って言ってたよね。何処行くの」


「軽井沢だよ! ここは埼玉だから二時間ってところかな。別荘のあるところはここより涼しい場所だから、過ごしやすいよ」


「へー、そうなんだ、暑いの苦手だからそれは嬉しいかも」


「あ、でも、僕も今日行くの初めてだから。この間、たまたま親戚のお姉ちゃんの結婚式あって、そん時に久しぶりにあった叔父さんが別荘あるのに全然使ってないって話してたから、僕が行きたいって伝えたんだよ。そしたら使っても良いって言ってくれてね」


「そうだったんだ。純平くんは何度か行ったことあるんだと思っていたよ。えへへ」


 この後、別荘に到着して一緒に料理をすることになった二人。


「そういえば、好きな物ってなんだっけ?」


「えっ、やだ〜純平くん忘れないでよ! 私が好きなのはオムライス。子供の頃からずーっとオムライスが好きなんだよ」


「じゃぁ、僕と一緒に作ろっか・・・・・・作ったことある?」


「うん、オムライスは私の大好きな食べ物だからね。家で良く作ってるから作れるよ。ところで純平くんは料理したことあるの?」


「ま、まぁね・・・・・・大丈夫だって、僕に任せとけ!!」


 自信なさげなのに、自信満々で答える純平くんの顔がおかしくて思わず笑っちゃった。


 これから料理することもデートみたいで何だか楽しい。


「じゃぁ、冷蔵庫の中身を見てみよう。材料確認にて一緒に料理しようよ。純平くんは何が好きなの?」


「プ、プリン」


 それっておかずじゃないし、主食でもないデザートじゃん。またもや突っ込みたくなったけど、それはしなかった。


「そうね、卵も牛乳もあるし、調味料は揃ってるみたいだから、プリンも作ろっか」


「えっ、作れるの?」


 子供みたいに目を輝かせている純平くんが何だかとても可愛い。


 この別荘にはレンジもあるから、レンジを使ってプリンは作ってみることにした。


 テキパキ指示をだしていたら純平くんに驚かれちゃったけど、これくらい私の中では普通だし・・・・・・。


 出来た料理を並べて二人きりで食卓を囲む。


 良く一緒にご飯食べることもあったけど、こうして作ったものを二人きりで食べるなんて初めてのことだったから、何でか緊張してくる。


 それって、新婚生活のようだからかもしれない。


 ──クスッ!!


「はっ、今笑ったけど、どうかした?」


「ちょっとね・・・・・・えへへ。純平くんお味はど、どうかな?」


「うん、美味しいよ。オムライスの卵がトロトロで・・・・・・美久ってプロじゃん」


「嫌々、それは大袈裟だよー!! えへへ」


「それより、このプリンとっても美味しい。出来たて食べるの初めてかも!」


 アツアツのプリンは二人を優しく包み込むとても幸せな気持ちにしてくれた。


「ねぇ、僕にアーンってしてよ!!」


「ええっ、それってカップルがすることじゃん」


 お互いパートナーがいるから、私は必死で遠慮してるのに、純平くんは何故か諦めてくれない。


「もう、仕方ないなぁ、ほら、アーン」




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