第9話発見
翌日私は安藤家の前にいた、なんとしても雄太君を見つける。そのことだけを考えドアが開くのを今か今かと待っていた。
まったく不便な体だ。ものには触ることができる反面ドアや壁などは通り抜けることができない。
するとドアが開いた。私は思わず身構えた。小百合だ、やはり手にはビラがある。小百合は当然私に気づくことなく、か細い声えで言ってきますと言って出ていった。中には父親がいるのだろう。
あ、どうせなら今家に入ってしまえばよかった。私の姿は見えないのだから。やはり実際に見えないとはいえ他人の家に入ることに緊張しているようだ。
おちつけ私。
まだかまだかとまっているとドアが再び開いた。
父親だ、私は急いで家の中に入った。肩をドアにぶつけた。父親からしたらいきなりドアががたんと音を立てたのでびっくりした様子だった。男の顔は・・・いやな顔だ。
何とか家に入ることができた。部屋は想像していたよりもきれいだった。無計画に進入したは良いが一体どこに雄太君を隠しているのだろうか。私は思わずはいている靴をぬいだ。説明し忘れたが私の身なりは事故当時のものになる、どうやら私が死ぬときにみにつけていた衣類は人には見えないらしい、しかし私が今、目の前にあるお皿を手に取ると叔父以外にはお皿が勝手に浮いているという状態になるようだ。なんとも不思議なものだ。しかしこれによって間接的に人に触れることができることに気づいた・・・
今はそれどころではない。靴も脱ぐ必要はなかった。私は再度靴をはいてトイレの扉を開けた。いない。部屋はそこまで広くはない。お風呂か?扉を開ける、やはりいない。
どこだ。すると押入れが目に入った。一気に緊張が走った。それと同時にあることに気づいてしまった。もし押入れに雄太君がいた場合・・・母親も共犯の可能性が高くなる。さすがに押入れに隠して気づきませんでしたはないだろう。しかしあんなに必死になって探している母親が犯人なのか。雄太君もお母さんを信じて待っているのに。
私はごくりとのどをならして押入れに手をかけた。
中には布団が入っていた。いない。私はほっとしてしまった。いやもしかしたら布団の中に?
そのときガチャリと扉があいた音がした。私はあわてて押入れをしめた。
「あれ?かぎしめてなかったか」
父親が帰ってきた。
パチンコじゃなかったのか。それともいつのまにかそんなに時間がたっていたのか。時計を確認したが10分ほどしかたってなかった。
「まったく金もってくの忘れちまったよ。あん、なんだか部屋の様子がへんだな・・・」
私の目の前に今くず男がいる。
もし私がみえていたらいますぐにでも襲ってきそうな顔の男。
「まあいいや」
そういうと男は金を手にして外に出て行った。
これからパチンコとなるとしばらくはかえってこないのか?どちらにしても急ぐ必要がありそうだ。
しかし部屋中探しても見つからない。もしかしてもう・・・
ふと昨日伯父と話したことを思い出した
「安藤家の様子だが、朝早く小百合が仕事に行って。父親の孝雄は洗濯物を干してタバコを吸って、それからパチンコにいく。んでパチンコから帰ったら洗濯物を取り込んで。タバコを吸って中にはいると、まあいわゆるひも男だな。せめて洗濯くらいはやるってか」
ベランダか・・・孝雄がベランダを管理している。そういうことなのだろう。
死んでいるはずの私の心臓の鼓動は大きくなるばかり、今にも口からでてきそうだ。へんな話。
私は思い切ってベランダの扉を開けた。エアコンの室外機のところにそれはあった。シーツが乱暴にかぶさっている、明らかな違和感。私は恐る恐るシーツをめくった。
「うっ」
思わず声がでた。
いた、雄太君・・・あまりにもひどい。顔は殴打されたのだろうあざがあり、がりがりにやせ細って息絶えている、私にはわからないがにおいも出てきているのかハエがたかっていた。
「畜生、あのくそ親父」
私は気づいたらキッチンにある包丁を手にしていた。
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