第6話尋ね人
ことの始まりは一週間前にさかのぼる。俺の下に一人の女性がたずねてきた。
女性の名前は安藤小百合(32)。
あの公園の近くのマンションに夫、達夫と5歳になる息子の雄太の三人暮らしだったという。
小百合は目を赤く腫らし、口元はハンカチで押さえながらチラシを渡してきた。
チラシの内容は《この子を探しています、身長105センチ、痩せ型、髪はぼさぼさ、ちょっと古めのTシャツを着ている、右手に大きなやけどのあとがある》
俺はチラシに目を通しいった
「で、警察にはいったんですか?」
小百合はか細い声で答えた
「はい、捜索願はだしています、ですが見つかりません、ですから夫に頼んでチラシも作って配っています」
警察も介入していて1週間たっても見つからない。こいつはきな臭いな。夫と来ていないのも気になる
「あの、ご主人は今日は?」
質問の意図を察したのか小百合は答える
「今日も駅前でビラを配っています、あの、先ほどお渡しした」
なるほど、夫婦で必死に探しているということか。となると、第三者による事件の可能性も高くなってきたな。
ふと小百合を見ていると、お腹の異変に気づいた。
「失礼ですが、今妊娠中ですか」
「そうなんです、今5ヶ月です。雄太もこの子が生まれてくるのを楽しみにしていたんですよ」お腹をさすりながら小百合は優しい顔になった。
翌日、最初の疑念がぬぐえることができず、安藤一家が住むアパートを張り込むことにした。まだ朝も早い時間であったが小百合が出てきた。今日も雄太君を探すのか手にはチラシの束を持っているようだ。
しかし、俺が気になっているのは旦那のほうだ。俺はもうしばらくそのドアが開くのを待つことにした、
2時間ほどたったころだ、さすがに出てくる気配がなく、近所の聞き込みでもしてみるかと車を出ようとしたところドアが開いた。
あの男が旦那か。小百合の話によると毎日駅前でチラシをくばっていると・・・しかし男の手にはチラシなど持っている様子はなかった。しばらく男の後を追うことにした。
男が目的地に着き建物の中に消えていった。パチンコ店である。
なるほど。妻には嘘をついてパチンコ通いか。これはいよいよ怪しいな。俺はアパートにもどり聞き込みをすることにした。
アパートの管理人の証言
「あそこの家族はとても仲良しですよ」
開口一番そう管理人は答えた。
「ご主人も奥さんの連れ後の雄太君ととても仲良しでした。だからお二人のショックを考えるととてもかわいそうで。はやく雄太君が見つかるといいんですけど。あなた探偵さんなんでしょう。早く見つけてあげて」
かくれんぼではないのだ、そう簡単にみつかれば警察がとっくに見つけている。
それよりも雄太君が小百合の連れ子とは小百合はそんなこと一言もいっていなかった。
次に俺は隣人の家にいった。
隣人50代女性の証言
「お隣さん、挨拶程度の付き合いしかないからあまりわからないけど、昼間によく子供の泣き声とお父さんの怒鳴り声が聞こえたよ。そこまでひどい感じには聞こえなかったからしつけの一環だと思うけど、普段は家族3人でよくでかけてるみたいだね」
女性はふと思い出したようにこういった。
「そういえば隣の奥さん、生保レディなんだけどもしかして子供に保険かけてたとかじゃないの?、やだ、まるで何かのドラマじゃない」
女性はひとりで勝手に興奮をしていた。
それから三日間、小百合の動向を今度は追うことにしたが、営業活動の間にビラ配りをする様子が見られた。
そして4日目・・・
「お前たちの事故の知らせがきたんで捜査はいったんやめってわけだ。まあそんなかんじだ」
事務所のいすに座りながら俺は事件の概要を姪に伝えた。
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