虚言と嘘口と詭弁とずるさ

エリー.ファー

虚言と嘘口と詭弁とずるさ

 壊れゆく時間のために嘘をつく。

 一生に一度だけの散歩道。

 私を連れて行ってくれ。

 構わないが、このままでは死んでしまう。

 それがいいんだ。死ぬかどうかの散歩道が良い。

 いいのか、本当に死ぬぞ。

 どうせ、地球はもうだめだ。消えてなくなることが確定している。それよりも前に脱出するのだ。

 勘違いだと思わせなければならない。

 誰に。

 地球に。

 地球を騙すと。

 そう。地球は変わってしまった。

 どこから、どこへ。

 あれから、あれへ。

 そうか。

 そうです。


「地球が滅亡するそうです」

「知っているよ。ニュース番組はそれでもちきりだ」

「まだ。ニュース番組なんて見てるんですか。あのリアリティショーを」

「リアリティショーだと思って見ている」

「安心しました。付き合いをやめようかと思ったほどです」

「ニュース番組なんて粗末」

「そう」


「ニュース番組はかなり丁寧に作られている。見る価値がある」

「分かります」

「まず、放送倫理委員会というのがあってだな」

「分かります、分かります。つまり、多くの監視のもと存在しているコンテンツであるからして、非常に信頼に足ると」

「そう、それが言いたい」

「実際、垂れ流されているだけの情報は、混合玉石で分かりにくい。その点、ニュース番組が取り上げるニュースは、クオリティの平均が高いところにあります」

「分かる。分かる。だから、見たくなる。というから、やはり人が見たくなるような番組作りをしている」

「その通りです」

「ニュース番組が始まるから見よう」

「えぇ、そうしましょう」


 地球の滅亡が近いとか遠いとかよく分からないのは、人間が地球にいるせいである。饒舌になっている。

 そうこうしているうちに、皆、死んでしまう。

 真っ白な考えを自分の中に巡らせることでしか、私たちは前に向かって歩く方法を知らない。そのため、地球の滅亡などという安直な未来を信じるようになってしまった。

 成人式を執り行う。

 地球が滅亡する前に行うのが必須だ。

 そうだろう。

 違うわけがない。

 今、重低音の中、私たちは振袖を。スーツを。着る。

 晴れの舞台である。


「成人式が執り行われるとのニュースがありました。長谷部さんいかがでしょうか」

「このような地球滅亡といった大きな局面の中で、成人式。考えられませんね。常軌を逸しています」

「しかし、最後だから楽しもうという考え方も」

「いえいえ、けしからん話です。皆が怯える中、しっかりと怯えることができない若者。けしからんです」

「なるほど。確かに若者たちの行動は目に余るものがありますね」

「そうです。やりたいことをやりたいという考え方では、いつか不幸になります」

「まぁ、そのいつかが、もう来ないんですけどね」


 地球は滅亡するのかどうか決めよう。

 何で決めましょう。

 今日、外で浮かれている人間が多かったら地球を救ってあげよう。

 なるほど。

 もしも、真面目に捉えていたり、怯えていたり、恐怖していたり、震えていたりしている人間が多かったら、地球滅亡確定で。

 承知しました。早速どちらが過半数なのか調べてまいります。

 はい、お願いします。

 では、失礼いたします。

 あ、それとさ。

 はい。

 どっちでもいいから

 何がですか。

 ただ、どっちが多いのかを知りたいだけだから、別に滅亡させてもさせなくてもいいから。なんとなく理由をつけただけだから。

 承知しました。では、そうですね。

 うん、決めていいよ。

 じゃあ、滅亡で。

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