真っ白になるくらいに
ゲートの前についにヴェッセルと共にグルグルと待機所で待っていた。
そんな中で先輩騎手の方々と雑談したり何なりと時間を適当につぶしているとついにその時がやってきた。
「ふぅ~。いつもよりも緊張するな。」
空の青さがいつもより強調されている。そんな中でヴェッセルの機嫌は天元突破して調子あげている状態だし、そう考えると・・・楽しみが勝っているところまである。
「どこまで行くんだろ?」
今日はいつにも増して葦毛の馬体が輝いている。それと共に俺から笑みがずっと漏れだしていることに気が付かなかった。
土曜日に行われる第5レース。基本的に競馬場には人気がいない。大体、メインレースが11レースか12レースであることが多いので午前中にあるレースには人が少ないのだ。しかし、実況はついている模様。
しかしながらまだ芝が剥げておらず馬場も良い。そして、相手はえげつないポテンシャルを持った今後のレースにも直結する一戦。
「さてと・・・」
そして、レース前のファンファーレが鳴り響いた。
群青に響いたトランペットなどの金管楽器の音が、数々の名馬・騎手向けて誓うように空へ高く鳴り響いた。
そう言えば昨日の夜、久しぶりに夢を見た。ヴェッセルと一緒に凱旋門賞をかけている夢だった。しかし、その夢はあまりにも実際に起きているようにも見えた。
「・・・」
ゲートインをそれぞれが始める頃、俺は視界から全ての馬、そして数少ない観客、ファンファーレの余韻、実況・解説の音すらも消えていく。視界は真っ白に染まっていた。
「すぅ~・・・」
ヴェッセルの嘶きが聞こえる。しかし、彼も同じようだ。その嘶きは天高く舞い上がる。
ゲートに14頭が入り、補助員が消えていく。視界には誰もいない。
「さぁ・・・」
ゲートが開き、静かなスタートを決めた。ヴェッセルには後ろについてもらった。
1800mの黄金の血の新しい旅が始まった。
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