主人公の進路が気になるのです。
他の高校のことは凪には知る術もない。
なのだけれど
そのイベントは一年生時点ではただの事前調査といった簡単な二者面談のはずだった。
「よーし。
「相変わらず
毎回凪への呼び方を変える一年一組の担任。
このやり取りは毎日のコミュニケーションのひとつなのかもしれない。
「んで?
「ですよー」
「夏海いや、親御さんとは?」
保奈美は夏海ときちんと話しているのかと言いたげだ。
なので凪も対応を改め、
「いえ先生。母とは話していませんし、今後も話すことなく決めることになります」
「……そうか」
貝原先生は白衣から使い捨てだろうか、そのボールペンで頭をかいている。
「終わりで――」
「いやまだだ。そう焦るんじゃない。親御さんが進学させたいとか思っていてもか?」
少し凪は考え、
「……そうですね、断ると思います」
「……」
「先生」
まだ子供と自覚している凪でもわかる。
多分この先生は夏海のことも考えている。
だから上手く言葉に出来ないことがあるのだろう。
と凪は予測している。
「あぁすまんな。なんともやりにくいな」
「そうでしょうね」
「わかったような口を聞くんじゃない。確かに
「……」
「まあ今更だな。あーめんどくさいな」
「ひどい言いようですね」
「話せと言ったところで話すつもり――は無いのだろ?」
「ですね」
「だからめんどくさいと言っているんだ。少し踏み込んで話すが良いか?」
「学校にバレたくないってことですか?」
「ムカつくな凪……、まぁそうだよ」
「最初からそう言えばいいじゃないですか――保奈美ちゃん」
凪はビクッとした。
かなり鋭い目つきで睨まれたからだ。
「お前は……お前は夏海の負担になりたくない。ってただそれだけが理由か?」
「……なにか問題あるんですか?」
「あるだろ。そこにお前の夢はあるのか?」
凪にとってはまさに「何を今更なこと」にほかならない。
「そうですね、ならこう言えばどうでしょか。僕の夢は夏海を助けてあげたい」
「……殴ってやりたくなる言い方だな」
「そうですか。あのー保奈美ちゃん」
「なんだ」
「今日はここでやめませんか。何となく言いたいことは俺でもわかりますし――部活の時でも話せますよ」
「……」
保奈美は再びボールペンで頭をかいて凪を見ながら溜息をついている。
わからなくはない。
が、そこまでのことなのだろうか。
と、凪も自分へと聞いてみる。
夏海に楽になってほしい。
少しくらい。
例えば旅行に行って欲しい。
いつまでも飲み続けるなんてきっと良くない。
それに不自由なく育ててくれた。
感謝してもしたりない。
二人しかいないし。
家族が。
「わかった。今日はここまでにしよう」
凪が自問自答していると保奈美は察したのだろうか。
しっしっと手を振り面談を切り上げることに決めたようだ。
「わかりました。家でも考えてみます、今日の――」
「――部活はやるぞ」
「わかりました……」
どうやら部活でも問い詰められるのだろうか。
少し凪は
つまり今は放課後なのだ。
すぐに奇跡の再開なのだ。
「凪ー、喜べ! モデルだ!」
案の定すぐに保奈美との再会を果たした。
が、何やらニコニコで美術室に入ってきた。
その理由は明白だった。
ご機嫌な様子の彼女の隣には、
「凪くん」
えっ
「汐栞、まさか……」
「そのまさかです。モデルです」
「……」
「良かったな凪。ワハハ、なんと――」
「先生っ!」
「ああ、すまん。つい……」
なんだ、ついって……。
それにしてもまさか汐栞がモデルとは。
家に続き部活も……。
しかしどんな風の吹き回しだろうか。
保奈美が脅したのだろうか。
と、凪が二人を見ながら思案していると、
「凪くん?」
と、汐栞が隣の席にやってきて腰掛けてくる。
汐栞は「ん?」と首を傾げていた。
「凪、
「はあ」
「じゃあ、私は本当に忙しいから仕事してくる」
「先生ありがとうございました」
汐栞は席を立ち上がり保奈美へと頭をさげた。
保奈美は少しカッコつけてか手を軽くあげ「頑張れよ」と。
そう一言残し美術室を出ていったのだった。
保奈美がいなくなると隣の汐栞から、
「凪くんよろしくお願いします。二人目です」
「二人目?」
「部員ですよ。ということは凪くんが部長ですね」
「……」
「な、何か怒らせることでもしましたか、す、すみません!」
「いや、少し近いなって」
「ふぇっ! ごごごめんなさいごめんなさい! 調子にのってすみませんっ!」
「何度もそんなに謝らないで、別に汐栞がなにか悪いことした訳でも……」
凪は「どうしたものか」と悩み始めた。
この調子では部活になりそうもない。
こう何度も謝られるのも。
なので凪は、
「汐栞」
「はいっ!」
汐栞がキリッと立つ。
「汐栞さん」
「はい……」
汐栞がしゅんとする。
「明らかに落ち込むのやめてねっ」
「ご――」
「ごめんなさいは禁止「なのです」」
「っ!」
「真似してみた」
少し不貞腐れたのか汐栞はその場でしゃがみこみ、膨れ顔で凪を見上げていた。
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