めげたくないです。
重たい荷物を家へと運び冷蔵と冷凍。
野菜室やチルド。
と、慣れた手つきで食材を分けていく
その間、
「すみません。もう大丈夫です」
と言いながら
汐栞は先程から変わらず硬い表情をみせている。
凪はいつもの雰囲気との違いに少し緊張してしまい少しだけ顔を強ばらせた。
「先日のお話をしたくて時間を頂きました」
神妙な面持ちとでも言うのか、そう汐栞が話し始めた。
「はい。なんでしょう」
凪がゴクッと唾を飲み込む。
「まず……、なぜ急に言葉使いが変わったのでしょうか?」
「え?」
「私に対してです。私の家から帰る時からのお話です」
「……」
「凪くんは、自分で気が付かなかったですか?」
汐栞の真っ直ぐな視線から目を逸らしてしまった凪は、
「ええと、それがなにか?」
と、凪が答える。
それに汐栞は、
「いえ。悪いと言っているわけではないのです。むしろ丁寧さは大切だと思います」
「じゃあ――」
「――ですが、凪くんの場合……私の家。それを目にしたからではありませんか?」
「……」
「凪くん。おそらく私の家は凪くんの想像しているような家だと思います。けれど急によそよそしくされるのは……、やっぱり悲しいのです」
「……」
「私は……私は凪くんともっと仲良くなりたいのです」
「……そう」
「はい。凪くん私を――見てもらってもいいですか?」
そう汐栞に言われ、凪はゆっくりと恐る恐る顔をあげ、
「ごめん。えーとうん、気をつけるよ」
丁寧語。
それが出そうになるが言い直す凪。
少しの間があき凪は再び黙り俯いた。
「はいっ! ありがとうございますっ」
すると、瞬時に満面の笑みで答える汐栞がいた。
汐栞は続けて、
「凪くん、の絵……感動しました。本当の本当です」
「それはどうも……」
「んー! 暗いです!」
汐栞は両手をグーで握り締め、それをブンブン振り回し「もーっ」と嘆いている。
「ははは」
「えーと、凪くん」
「はい」
「これからも描いてもらえませんか? 私を」
「俺、よりも上手い人――多くない?」
どうしても一度言葉使いを変えるとたどたどしくなってしまい上手く話せないな。
と、考える凪。
「いえ凪くんのがいいんです。というよりも、じゃなきゃダメなのです!」
「また、あの兎?」
「でも構いませんし、いろんなの持ってますよ? ちなみに……凪くんはどんな女の子が好みですか? 」
「……」
「ご、ごめんなさい。調子に、のりました」
「そういうの考えたことないというか、経験が……」
「そうですか」
そう言いながら俯いた汐栞はやはりというのかなんというのか。
いつもの慌ただしい汐栞だった。
「あ、でも」
「でも?」
「汐栞さんの兎はとても似合っていると思うよ、可愛いと、思うかな」
「あばばばっ」
「ちょ、汐栞さん」
「大丈夫、です。すみません取り乱しました」
「でも、なにか考えておくよ。好みとかうんぬんは置いといて」
「はい! お願いします。それとー」
「ん?」
「不躾なお願いなのですが」
「はいはい」
「
「うん」
「
「そう、だね」
「……
(なるほど)
「汐栞ちゃん。汐栞」
「キャァァァア!」
と、両手で顔を隠しながら倒れ込んでしまった。
「大丈夫?」
「何度もすみません、取り乱しました」
ふぅふぅ息を荒らげながら姿勢を戻す汐栞。
「じゃあ汐栞でいい?」
「お、お、おね、おねがいしまふっ!」
頭を下げた汐栞は、突如「これ以上は家が……」と。
そう言いながら慌てて家を飛び出していった。
(なんというのか、賑やかだな)
ただ。
皆が言う可愛い。
ってわかる気がしたかも。
凪は汐栞に気圧されたことも忘れ居間で固まっていた。
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