第4話 店主の正直さ


「? うん」


「僕は病気を抱えています。命……に関わるほどではないですが、健康な人間ではありません」


「知ってる」


「え?」


沙羅さらが力を送って……和らげているよ?」


「……そうなんですね」



 それで、発作とかもあまり起きず……健常者と同じように生活出来ているわけですか。


 賢也けんや君も驚いているようでしたが……沙羅ちゃんは、頷くだけでした。



「沙羅が、主である柊司しゅうじさんの抱えているものを、無くそうとするのは当然」


「……僕を好いてくださっているから?」


「当然!」



 興奮気味で頷く沙羅ちゃんが可愛いです!


 ちょっとだけ、コーヒーのお代わりを催促する赤ちゃんだった時の名残りを感じました。



「……では。その話は一旦終わりにします。僕の正直な気持ちをお伝えしますね?」


「うん!」



 浮かんできた言葉で、沙羅ちゃんを傷つけたくはありません。


 僕の……僕自身の、正直な気持ちを言葉にします。



「まだ……完全な愛ではないですが。僕は……これからも、沙羅ちゃんと一緒に居たいです。主従関係でなく、『家族』として。今はこの言葉で納得してもらえますか? 沙羅ちゃんが居なくなるのは……いやです」



 掴んだままの手を握り、少し祈るように僕は顔を俯かせました。


 沙羅ちゃんがどのように受け止めてくださるか……少し、怖かったんです。


 今までの恋人達にも、このような言葉を伝えたかもしれませんが……気持ちは違います。


 僕の……本心なんです。



「……沙羅、ここに居ていいの?」



 沙羅ちゃんは、僕の言葉を理解してくださったのか……ゆっくりと聞いてくださいました。



「……はい。もちろんです」



 僕が顔を上げると……沙羅ちゃんは目尻に涙を浮かべていました。



「! 居る!! 沙羅ここに居る!! 柊司さんの側にずっと居る!!」


「沙羅ちゃん!!」



 まだ僕の気持ちが半端であるのに……沙羅ちゃんは応えてくださいました。


 僕は感極まり……彼女を抱きしめました。


 コーヒーを飲んだばかりだからか、とても香ばしい良い匂いがします。



「やーやー、一件落着かなあ?」


「……せやな?」



 ここで、僕らだけじゃないのを思い出しましたが。


 沙羅ちゃんは僕から離れず……さっき以上に強い力で抱きついてきました。


 や、柔らかい体もですが!? お胸が凄くて、僕は必要以上にドキドキしてしまいます!!


 とりあえず……今日の残りは、パーティーを再開しましたが。


 沙羅ちゃんのご飯は、やはりまだコーヒーと小豆料理しか口に出来ませんでした。

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