第3話 店主大混乱

 突然の告白に、僕はどうすれば……と、抱きついてきた沙羅さらちゃんを見ているだけしかできませんでした。


 何故なら、赤ちゃんだった沙羅ちゃんが……最初は中学生サイズから、今は美人さんになったんです。


 そんな彼女から、いきなりの愛の告白。


 僕を恋愛対象として見ていただなんて、全く思っていませんでしたから!?


 それと、僕はどうなってしまったのでしょう。


 沙羅ちゃんからの告白に、全く『拒否』などの感情が浮かびません。むしろ……とっても嬉しいんです!!



「さ、沙羅……ちゃん」


「なに? 柊司しゅうじ様!」


「さ、様はよしてください。……な、何故僕を?」


「ただのケサランパサランだった時から、沙羅はずっとお慕いしていたんだよ!!」


「「えぇえ!?」」



 また賢也けんや君と驚いてしまいましたが……つまり、沙羅ちゃんは最初に赤ちゃんの姿になった時から…… 僕を?


 にわかに信じがたいですが……沙羅ちゃんは人間ではなく、妖怪さんですし……感情の成長などは色々違うのでしょう。


 だからとは言え!


 いきなり赤ちゃんから美人さんに成長した、僕の養女むすめちゃんに告白されたんですよ!?


 一応、父性などを持っていた僕はどうしたら!?


 嬉しいとは思っているんですが、一応の道徳心が……ええ、それはもう。



「……柊司、さん。ダメ?」


「ダメ……と言いますか」



 美人さんを泣かせてしまいそうです!


 これは回避しなくてはいけません!!


 しかし……恋愛がこれまで淡白と言われ続けていた僕に、これは至難の業ですよ!?


 応えて良いかどうかの判別が!!



「……柊司。まんざらでないなら、応えればええやん」



 先に少し落ち着いたらしい、賢也君が僕の肩をぽんぽんと叩いてくださいました。



「え?」


「俺と乃絵のえちゃんのことも、柊司は応援してくれたやん。なら、今度は俺の番や」


「……賢也君」



 笹木さんとお付き合いを始めたことで……気持ちに余裕が出たのでしょうか?


 僕をこちらに移住するように勧めてくださった時は、幾らかの焦りなどがありましたのに。


 いい意味で変わったんですね?



「そーそー。柊司君は素直になっていいと思うよ?」



 そして、賢也君だけでなく颯太ふうた君もいます。


 姉や両親を失った僕ですが……完全に一人ではありません。


 沙羅ちゃんは、僕の養女ちゃんではありましたが。


 姿を変え、抱えていた気持ちを真っ直ぐに僕に伝えてくれました。


 なら、僕がすべきことは……と、抱きついていた沙羅ちゃんに少し離れていただき。


 僕は彼女の両手を握りました。



「沙羅ちゃん、聞いてください」



 僕は、浮かんだ感情を言葉にすることにしました。

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