第2話 綿ぼこりの成長②

 とにかく……沙羅さらちゃんが大きくなりました。


 大人ではなく……外見は颯太ふうた君くらいの美少女。十四歳くらいでしょうか?


 僕が確認のために、名前を呼んだら……ずーっと抱きついています。


 赤ちゃんの時は、気持ちがほっこりしましたのに!?


 今はドキドキで落ち着きませんよ!!



「……マジで、デカなった」



 賢也けんや君は、お口あんぐりです。


 感心するように僕らを見ているだけでした。



「んー? 僕としては、もっと大きくなると思ってたけど……あ、そうだ」



 ぽんと、颯太君は扇子を開きますと……僕に向けてきました。



「はい?」


「コーヒー飲ませてみたら? 牛乳入りじゃなくて、普通の」


「い、今ですか?」


「今今。試してみたいから」



 なので、沙羅ちゃんには非常に残念かもしれないですが……抱っこを解除してもらいました。


 まだドキドキは落ち着きませんが、出来るだけ息を整え……いつものようにコーヒーを淹れます。


 淹れるのは、沙羅ちゃんが好きなモカブレンド。


 豆を挽き、アメリカーノ仕立てで淹れます。



「あ。普通のホットよりはぬるい方がいいですよね?」


「んー? 沙羅、どう?」


「……主に任せる」



 顔色を伺う感じ、普通のホットだと舌をやけどするかもしれません。


 ささっと淹れますと……店内に芳ばしいコーヒーの香りが漂います。


 一瞬、いつものように赤ちゃんコップに入れそうになりましたが……掴みやすい、ビール用のゴブレットにしました。



「はい、お待たせ致しました」


「……ありがとう」



 両手でしっかり持った沙羅ちゃんは……ゆっくり、ゆっくりと中のコーヒーを飲んでいきます。


 すると……また光ったんです!?


 服は破けたりしませんでしたが……髪がさらに伸びていきます。手足も胴体も!?


 今度はすぐに光が消えましたが……なんと、沙羅ちゃんはあの美麗みれいさんに負けず劣らずな美人さんに大変身しました!?


 ただ……ちょっとだけ、僕や姉の面影があるようにも見えましたが。



「……沙羅、ちゃん?」



 僕がまた呼ぶと、沙羅ちゃんはとっても蕩けた笑顔になりました!?



「これで……主の隣に立てる?」


「え?」



 どう言うことかわからずでいると、沙羅ちゃんはまた僕に抱きついてきました!?



「主……柊司しゅうじ様の隣に立ちたい! 大好き!!」


「「えぇえ!?」」



 これはもしや……愛の告白ですか!?


 僕と賢也君はすっごくびっくりしましたが……颯太君はわかっていたのか、ケラケラ笑うだけでした。

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