第二十一章 綿ぼこりのクリスマス

第1話 初の雪かき

 冬も深まって参りましたよ!



「っくしょー!!」



 悔しがっているのは、僕ではありません。


 コーヒーショップ、『双樹そうじゅ』のオーナーであり……僕の幼馴染みでもあり親友の賢也けんや君です。


 僕も今頑張っているのですが……お店と居住地である長野の一角に、冬が本格的に到来したんです。


 と言うことはつまり。



「まあまあ、賢也君。雪かきは大事ですよ」



 十二月も中旬になったのですが……今年は早めに雪が降ってきたのです。僕は移住して初めてでしたが……はしゃいでいる場合ではありません!


 お店前にたくさん積もったので、自分達とお客さん達のために雪かきと融雪剤撒布をせねばならないのです!!


 車道は、専門の融雪剤を撒布してくれる車両が通りますが……歩道は自分達で頑張るしかありません!!


 寒いので、コーヒーを買いに来てくださるお客さん達のためにも!


 人生初の雪かき。不肖、三ツ矢みつや柊司しゅうじ……張り切って頑張りますよ!!


 年齢のこともあるので、腰を負傷しないように適度に力は抜きますが。



「……今年は多いわ!」



 賢也君は僕より先に長野へ移住してきているので、雪にはいくらか慣れています。愛知だと……限られた地域以外は暴風だけですからね? 寒くて辛いのは。



「終わったら、クリスマス限定のマシュマロココアが待っていますよ!」


「くぅ!? 魅力的やから頑張るわ!!」



 お湯で作るココアではなく、店頭販売用なので小鍋から作るココアですとも!


 中で休んでいらっしゃる、ケサランパサランであり……僕の養女むすめちゃんでもある沙羅さらちゃんにも飲んでいただきたいですが……試作のひと口でリバースでしたからね。


 非常に残念ですが、賢也君とお客さん達に振る舞いますとも!



「……うーん。こんな感じでしょうか?」



 せっせと頑張る賢也君とは別に、だいたいの目処をつけて……融雪剤を撒ける範囲を頑張った僕です。


 そろそろ良いかな? と思うと……後ろから、肩をぽんぽんと叩かれました。



「もう少し、しっかり掻いた方がいいですよ。店長さん」


「あ、おはよう御座います。笹木さん」


「おはようございます」



 つい先日まで、雑誌『NOA』で大変お世話になりました若い女性編集者さん。


 ですが、実は人間側に紛れ込んでいらっしゃる……雪女の乃絵のえさんと言う妖怪さんです。


 人間としては、名字がきちんとあるので僕はそっちで呼ばせていただいていますが。



「出勤前ですか?」


「はい。少しお手伝いにも……あと」



 と言うと、ダッシュして賢也君の後ろからハグしに行かれました。



「うぉ!?」


「賢也さん! おはようございます!!」


「え、は? の、乃絵ちゃん!?」



 色々ありましたが……こちら、無事にお付き合いを始めたのですよね?


 ドライブデートなどを繰り返し、改めてお互いの気持ちを確か合って、だそうです。


 笹木さんは雪女さんですが、人間の姿でもどっちでも意識すれば相手に冷気を伝えることはないのだとか。


 あと、温かい飲み物も普通に飲んで大丈夫そうです。



「いや〜、青春ですねぇ」



 二人の仲睦まじさに、僕はなんだかほっこりしますよ。


 僕は僕で……いつか、お相手が出来るでしょうか?


 つい先日の、座敷童子の颯太ふうた君には意味深な発言をされてしまいましたが。

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