第4話『克服かカフェラテ』



「あれ? 間半まなかさん?」



 主が戻って来られた。


 沙羅さらはすぐに抱っこをねだったが、主は『待っていてください』と……私のところに来ると、本体を軽く撫で……持っていた荷物をちゅーぼーの冷蔵庫などに仕舞って行った。


 そう言えば、買い出しに行かれていたことを思い出した。



「やあ。勝手に邪魔して失礼したね?」


「いいえー。颯太ふうた君にもお留守番おかませしちゃっていましたし」



 主はさして驚かないようだった。


 颯太様をはじめ、様々なあやかしと接点を持ったことで……怖気付くなどが薄れたのだろう。


 沙羅が最初に赤子に変化した時も……少しばかり驚いた程度だったが。


 そして、片付けが全て終わられてから……沙羅を抱っこしてくださった!



「う!(主!)」


「いい子にしていましたかー?」


「うん、いい子してたよね?」



 颯太様の、少し呆れたような声音が気になったが……今は気にしないでおく。


 主に抱っこしていただいているから!!



「それは良かったです。……間半さん、コーヒー飲んでいかれます?」


「そうだね。今日はきちんと払わせてくれないかな?」


「え? いいんですか?」


「毎回タダでは、あやかしでも気が引けるからね?」



 颯太様はほぼ毎回……主が世話になっているから、とタダでいるが。沙羅はここの一員なのでタダも何も関係がない。


 総大将がもう一度頷くと、主も納得したのかメニューを渡したのだった。



「メニューはこちらになります」


「うーん。悩むねぇ……外は寒いし、甘いものも欲しいなあ?」


「総大将! 僕のお勧めは柊司しゅうじ君のカフェラテ!」


「カフェラテか……久しく飲んでないなあ?」


「ふふ。こちらで召し上がっていかれます?」


「そうだね。甘みは……自分で調整するところかな?」


「はい、お砂糖は別です」


「うー!(沙羅もー!)」


「え、沙羅ちゃんもですか?」



 沙羅の駄々をこねる具合で、言葉が紡げずとも……主には伝わった!


 しかし……沙羅は、ぶらっく以外のこぉひぃを口から吐き出してしまう。


 味が合わないのだ。ぶらっくと違い……こう、気持ち悪くなるのだ。


 だが……成長してから克服するとは限らない!!


 今でも克服の余地はあるのだ!!



「……まあ、試してみたら?」



 颯太様にも少し呆れられてしまったが!


 主もその言葉に苦笑いされ、ささっと……丁寧な作法で人数分のかふぇらてを淹れてくださった。


 総大将と颯太様は美味しそうに召し上がっていらっしゃるが……沙羅は! と主が飲みやすい温度にしてくださったものを、すぷーんで少し口に入れたが。



「あ゛う〜……(ダメだぁ〜……)」



 やはり、口の中で違和感を覚え……吐き出してしまった。


 主は、そんな沙羅を叱ることはなく……『綺麗にしましょうね?』と掃除をしてくださった。


 沙羅、克服はまだまだ遠いのか!?

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