第二十章 綿ぼこりの葛藤

第1話 ケサランパサランの気持ち

 主が動揺している?


 沙羅さらが……今以上に大きくなったら、どう対応するか。


 沙羅はあやかし。


 主と同じ……ヒトでは……人間ではない。


 賢也けんやは、あの雪女と交際するのは……ほとんど時間の問題だけど。


 主は……沙羅を『養女むすめ』と思って大切にすることが、今は満足しているから……と、座敷童子の御方に言っていたが。


 沙羅としては……違った。


 たしかに、今は幼い身体だが……沙羅は、それ以上を望む。


 もっともっと、沙羅は主のお側に居たい!!


 ただ、『あいどる』と言うような愛玩するみたいに、店の仕事をするだけでなく……主の、柊司しゅうじ様のお側で……一緒に仕事がしてみたい。


 あの雪女と同じ身体であれば……きっと役に立つだろう。


 けれど……まだまだ妖気が足りない。


 日々……成長はしていても、初めの時のように……身体が大きくなることはない。


 非常に……はがゆいが、主を混乱させるのも嫌だ。


 主の迷惑になりたくない。


 けど……主のお側に居たい。


 なんと……矛盾した考え。


 なんと言う……己の我欲だろう。


 だが……沙羅はそれほどにまで。


 今、私がおかわりと勘違いして……新しいこぉひぃを淹れてくださっているが。その横顔を見るだけで……沙羅は、幸せな気持ちになれた。


 自我を得て、主のお側で生活するようになり……まだまだ過ごした期間は短いが。


 賢也と雪女が、お互いを想い合うように。


 沙羅自身も……主を想っている。



(……お慕い申し上げております、柊司様)



 気持ちはあれど……今の沙羅は言葉に出来ないから、非常にはがゆい!!


 せめて……言の葉を紡げる年頃にまで、成長したい!!


 早くせねば……主は気づいていないだろうが、常連である女客の中に……主の横を狙う輩が何名かいるのだ。


 だからこそ、沙羅は邪魔をしたくなる!


 沙羅こそが、主の横にいるのに相応しいと思いたいから!!


 けど……第一は、主の気持ちだ。


 主は……沙羅が幼い身体だから、赤子として扱うだろう。


 しかし、大きくなったらどうなるか。


 座敷童子の御方が再び問いかけをしたら……主の霊気が、揺れ動いたのだ。


 つまりは……沙羅にもまだ望みがあると言うことだ!!

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