第4話 淡白と言われた

 洗車に行くついでに、笹木さんにはメールをすると行ってしまわれた賢也けんや君を見送り。


 店内には、僕と颯太ふうた君に沙羅さらちゃんとなりましたが……のんびりとした空気が心地良いです。


 外はさむさむですので、沙羅ちゃんのおかわりコーヒーは少し温度を高めにしましたとも。



「……賢也君に恋人ですか」



 親友に恋人が出来る事はいいことです。


 僕のために……色々してくださった恩人だからこそ、幸せになっていただきたいです。ちょっとだけ、人間をやめてしまうかもしれないのは驚きましたが……火坑かきょうさん達の事を先に知ったので、賢也君も大丈夫だと思いました。


 笹木さんは笹木さんで、人間側でいることを望んでいらっしゃいましたし。



「ん〜? 柊司しゅうじ君はいいの?」



 しみじみ思っていると、颯太君が首を傾げられました。



「僕ですか?」


「柊司君もそう言う年頃でしょ?」


「……颯太君は?」


「僕は、居ないねぇ? 自分だけでいるのが楽だから」


「……僕は、今でも充分幸せです」



 賢也君のお陰で居場所も出来ましたし、沙羅ちゃんと言う養女むすめちゃんも出来たんです。


 その間に……恋人だなんて、今は考えられません。


 今までお付き合いと言うものをしなかったわけではないですが。



『柊司は……いつも笑顔だけど、淡白だね』



 と、過去の人達に言われたのも一度や二度ではありません。


 僕としては大事にしていたつもりですが……相手の方には、そうは映らなかったようです。


 だから……姉が亡くなる前を最後に、ずっとどなたかとお付き合いすることもなくなりました。


 そこから、沙羅ちゃんが出来たことで……味気ない一人暮らしが、彩りのある生活となったんです。


 それで……充分満足していますとも!



「そっかぁ……。沙羅が負担になってることはない?」


「むしろ逆ですよ? 沙羅ちゃんが居ることで……満足しています」


「んー? じゃあ……沙羅が、今より大きくなった時も言える?」


「はい?」


「沙羅は人間じゃないんだよ? あ・や・か・し」


「あうあうあう!!」



 颯太君がスタッカートを効かせた言葉の後に……沙羅ちゃんが相槌を打つように、首を何度も縦に振りました。



「……沙羅ちゃんが?」


「そうそう。今より……もっと大きくなったら」


「……沙羅ちゃんがですよね?」


「いきなりどうなるかわかんないけど……ひょっとしたら、近いうちに成長しちゃうかもよ?」


「……えぇ?」



 沙羅ちゃんが大きく?


 いきなり大人の姿になるかどうかはわからないと言いますが。


 大きく?


 赤ちゃんじゃなくなる?


 それを想像しますと……なんだか、胸の奥がほんわりと温かくなる感覚を感じました!?

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