第2話 ぐいぐい告白

 冷たくないのか、笹木さんに手を強く握られても賢也けんや君は瞬間湯沸かし器のように……顔面真っ赤っかになっていくだけでした。


 そのまま、天に召されようと言う感じでしたが……笹木さんはずっと笑顔のままです。



「私……私! オーナーさんがハロウィンイベントで狼男になられていた時から、ずっと気になっていたんです!!」


「お、おん!?」



 また直球的な言葉に、賢也君は心臓を鷲掴みにされてしまったでしょう。……顔がインフルエンザになったかのように高熱が出た時の色合いになっていきます!!


 ちょっと、面白く思っちゃいましたが!



「あ〜はいはい? 乃絵のえ? そんな一気にアピールしちゃったら、賢也君倒れるよ?」


「え? ……あ」



 下手すると、鼻血一歩手前だった賢也君の手を……ようやく離した笹木さんは、すぐに彼の前で何度も謝りました。



「ごめんなさいごめんなさい!! 嬉しくて……つい!!」


「い……い、いいい、いや」



 めちゃくちゃどもった口調になっていますよ、賢也君。


 二人はしばらくぺこぺこ合戦をした後……笹木さんは、すぐに元の(?)笹木さんの姿に戻ってくださいました。



「……色々、ご迷惑をおかけしました。ですが! NOAの編集者としては、最後まできちんと職務を全うしますので!!」


「あ、はい」



 雪女という、儚いイメージとは随分とかけ離れていますが。こう言うパワフルな女性は人間も妖怪さんも関係ないんですね?


 ちょっと、勉強になりました。



「ねぇ、乃絵」



 僕が感心していると、颯太ふうた君が扇子をぱらりと開きました。



「? はい?」


「君は……君の努力でこちらにいる。もし、賢也君との仲が進展しても……こちらに居るの?」


「え、あ、は…………はい」



 いきなりの、こちらからの直球的な言葉にも僕らは驚きましたが……笹木さんは、きちんと頷きました。覚悟は生半可なものではないと言い切るように。


 僕は賢也君を見ると……何故か、乙女のように恥ずかしくて両手で顔を覆っていましたよ。いつもの強気はどこにいったんですか。



「そ。じゃ、柊司しゅうじ君達は気にせずにこれまで通り双樹そうじゅを切り盛りしていいと思うよ?」


「! はい!」



 きっと、沙羅さらちゃんの為もあるでしょうに……僕の心を読み取ったかの言葉。


 僕は嬉しくて、涙が出そうでした。



「ほ……ほぅか」



 そして、ようやく復活した賢也君はまだ歯切れが悪い口調のままでした。



「じゃ、じゃ! 我孫子あびこさん……ううん、賢也さん!! まずは、お友達からスタートでいいですか!?」


「ひゃい!?」



 賢也君……こんな奥手だったでしょうか?


 女性にリードを取られるとは……相手が妖怪さんであっても、随分としおらしい状態です。


 とりあえずお友達になっても、先が少し心配でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る