第4話 春はすぐそこ?
「
僕は、おかわりの前に沙羅ちゃんを抱き上げ、すりすりと頬擦りをしました。沙羅ちゃんは嬉しいのか、『きゃっきゃ』とはしゃいでくださいましたよ!
これには、ご褒美に今日のおやつ用にと解凍していた……
少しずつ食べさせますと、沙羅ちゃんはほっぺをピンクに染めながら喜んでくださいました。
「う〜〜!!」
「お昼ご飯は、甘納豆のお赤飯ですからね?」
「う!」
沙羅ちゃんの大好物は可能な限りご用意させていただきますとも!!
「しっかし〜、
「……なんや」
「いやいや? 悪いことじゃないよー? さっきの子には
「……ゲットって」
「必要以上に気にしているんなら、さっさと捕まえなよ? 僕らあやかしとは違って、君らの寿命は塵くらい儚い」
「……せやけど」
たしかに。
颯太君達妖怪さんと違い、僕ら人間は脆いです。体も寿命も。
その短い期間の中で、大切な人を見つけるのは至難の業ですから。
(……僕は、今のままで十分です)
沙羅ちゃんが
それ以上に大切な女性に出会えるのは……まだわかりませんが。
「まあ。猫人の大将のとこみたいに、ヒトとあやかしが婚姻を結ぶ場合もあるから。賢也君はそう言うのが良いの?」
「へ? あのにゃんこはんの?」
「そうそう。あそこの奥さん、元人間」
「「元??」」
「契りを結んだから、外見もだけど人間じゃなくなったんだよ」
「「へー?」」
そう言うご縁もあるのですね?
だから……
「すみません!」
とここで、何故か笹木さんが戻ってこられました。
「おや、笹木さん?」
「ペンを忘れてしまって、こちらにありませんか!?」
必死のご様子なので、僕もですが賢也君や颯太君も手分けして探しますと……。
「お。あったで?」
黒光りの綺麗なボールペンを手にしていたので、笹木さんは花が綻ぶような笑顔になりました。
「ありがとうございます、
「お、おん」
嬉しさのあまり、笹木さんがぎゅっとペンを持ったままの手を掴んだことで……賢也君は盛大に照れていました。
その表情を見て……僕は胸がほっこりしましたよ。
うまく行ってほしいですが……と思っていると、いつのまにか隣に居た颯太君が、閉じた扇子を口元に当てていました。
「颯太君?」
「今気づいたけど……あの子、人間じゃない」
「え?」
その言葉が賢也君達にも届いたのか。
笹木さんは、こちらに振り返ると苦笑いされ……彼女の周りに柔らかい雪が舞いました。
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