第3話 欠片の値段

 結構分厚い封筒なので、僕も賢也けんや君の隣に立ちました。



「……なんやこれ?」


「んふふ〜〜! 開けてみて?」



 颯太ふうた君の楽しげな様子を見ると……僕らにとっていいことなのでしょうか?


 それしか思いあたりませんが、何かしましたっけととんと浮かばず。


 とりあえず、賢也君が中身を開けますと……出てきたのは、通帳。


 しかも、黒光りのかっこいい通帳でした!?



「「え、通帳!?」」


「思い出してよ〜? 向こうで君達の欠片を換金したじゃない?」


「「あ」」



 心の欠片。


 僕のは美麗みれいさんへですが……沙羅さらちゃんが自分で出したものは、僕と賢也君の……双樹そうじゅの経営に必要な経費にすると、颯太君が一時的に預かってくれることになっていました!?


 それをまさか……このような形でいただけるとは!!



「……これ、そこの郵便局のやんけ」



 銀行は銀行でも、徒歩二分で行ける距離にある……郵便局のATMなどで使える通帳でした。名前の箇所には、『双樹』が会社名で記載されていました。



「そそ! 何か入り用になったら、そこで下ろせるでしょ? 僕頑張ったからね!!」



 えっへんと、胸を張る颯太君はかっこいいです!



「……肝心の金額は」



 と、賢也君は軽くスルーされましたが……僕も金額は気になりました。ぺらっとめくりますと……最初に印字されている金額に、僕は目を丸くしたでしょう。


 賢也君も、横顔から見てもお口あんぐりでしたし。



「百……千、ま、ん……お、億!?」



 颯太君達が以前に言っていましたが!!?


 たしかに……印字されていた金額は、まさにその通りです!?



【五億】



 その金額が刻まれていたのです!?



「ふふーん。あの欠片の一部だけど、これだけならしばらく困らないでしょー?」


「た……宝くじ買う必要ないやん!?」


「こ、こんなにも……いいんですか!?」


「いいのいいのー。換金手数料抜いても、これだけ渡してって、とちも言っていたし?」


「栩さん……」



 沙羅ちゃんにも大感謝ですが、彼にも大感謝です!!


 経費面はこれでしばらく困りません!!


 テナント料とかが、駅前のビルということもあり……結構かかるんですよね?


 収益以外、ほとんど賢也君の株でなんとかしていた部分も実はあるのです。



「……これ、申告にぎょーさん取られん?」



 しかし、賢也君は経営者と言うことで、やはりそこを気にされていました。


 すると、颯太君は扇子をゆっくり開きました。



「色々手を加えるって、前に言ったでしょ? 人間の仕組みも色々大変だけど……嫌な税金とやらでたっぷり持っていかれるのは良くないからね? そこは僕らでチョチョイと」


「……ほうか。おおきに」


「うん。どいたしまして」


「……本当にありがとうございます」


「沙羅のお陰だから、一番は沙羅に言ってあげて?」


「あう?」



 沙羅ちゃんと言えば、コーヒーを飲み干したのか……ちょうどストローからちゅぽんと口を離すところでした。

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