第4話 彼の病
「……うん。特に異常はなさそうだね?」
ハロウィンイベント、一日目が終わってすぐですが。
やはり、
場所は、
「……本当ですか?」
「うん。突然の感情の起伏があっても……発作の症状もなく落ち着いたなら大丈夫だと思うよ? 頓服は使わなかったんだろう?」
「はい、使っていません」
「念の為、血液検査するけど……結果は後日にしかわからないからね? ここじゃ、脳波検査までは出来ないし」
「いえ、ありがとうございます」
問診でここまで言っていただけるのでしたら、賢也君も安心してくださるでしょう。彼は今、家ではなく双樹で
「じゃ、お大事に。今日は薬必要ないから、会計だけ待ってて」
「はい」
鬱は、個人差があるようですが。
昨今では、単純な心の病だけでなく……脳に負担があるかもしれない、怖い病気です。他の精神病も神経や脳に負担が大きいとも言われてるくらいだとか。
僕のも……大きなストレスが脳へ負担がかかっていることで、軽めですが鬱になったと初診では言われました。姉を喪った、その大きなショックのせいでしょう。
少し落ち着くのも、年単位でかかりました。それまで……本当に、賢也君にもいっぱいいっぱい迷惑をかけてしまいましたが。
そう言うと、彼からゲンコツが飛ぶので直接は言いません。
「
会計も呼び出しがあったので、保険証と一緒に……他の手続きに提出していた証明書を返却していただきました。
一時期重症にもなっていたことがあり……僕は、今健常者ではありません。きちんと働けるようにはなりましたが、まだまだ何があるかわからないため……賢也君が保証人のような立ち位置になり、僕は『障がい者』になっているんです。
負担が医療面だと多いので、少しでも負担を減らそうと自立支援などの手続きもしました。お陰で、お金の負担もだいぶ軽くなりましたよ。
今も、問診と検査代だけでだいぶお安い。
「お大事にどうぞー」
「ありがとうございます」
クリニックは、出口から裏道を通るとすぐに双樹があります。本当に……偶然とは言え、賢也君もよくぞここのテナントにお店を開いたものです。
ゆっくりお店に向かうと、クローズの立て札の向こう側で賢也君が沙羅ちゃんをあやしているのが見えました。
「ただいま戻りました」
「おう、おかえり!」
「だ!」
沙羅ちゃんは、僕が来るとハイハイしてすぐに抱っこをねだってきましたよ。とても可愛いらしいので、拒否する理由はありません!
「先公、どないって?」
「発作もないので、特には。念の為に血液検査はしましたが」
「大したことないならええわ」
大袈裟なため息を吐いた感じ、余程心配させてしまったのでしょう。
いいところも悪いところも……僕は、ずっと彼に見せてしまっていますから。
「とりあえず……何か夕飯にしますか? 材料もありますし、僕が」
「どっか食いに行かん?」
「沙羅ちゃんのお腹も考えると……」
「あー……目立つしなあ? んじゃ、俺も手伝う」
「はい」
このような、何気ない日常を送れるようになったのを。
僕は、また姉や両親の墓前でしっかりと報告したい気分になりました。
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