第十二章 綿ぼこりの仮装
第1話 仮装で販売
ハロウィンこと、十月三十一日……ではなく、一週間前の本日。
僕は、
隣町のハロウィンイベントにお邪魔しているわけですが、出張と言っても……コーヒーの実演販売程度。まだまだ本格的なプロの域ではないため、出来ることは限られているのです。
「「「きゃ〜〜!? 可愛い〜〜!!」」」
そして、お客さんの心を鷲掴みしてしまうのは沙羅ちゃんですとも!
黒と紫をベースにした、魔女のお衣装。
ステッキも即席で僕が作りましたが、適当に沙羅ちゃんが振るだけでお客さんのハートを射抜いてしまうようです。
「ありがとうございます」
「「「店員さんもカッコいいです!!」」」
「……ありがとうございます」
僕も……沙羅ちゃんのご希望通りにバンパイアの格好に仮装していますよ?
絶対似合わないと思いましたが……賢也君にもやる気が出てきたのか、お姉さん譲りのメイク技術であら凄い?
いつもの僕とは違う、とってもスタイリッシュな出来栄えになりました……。三十越えているせいもあり、二十代の若々しさよりも凛々しくなっているような?
ともあれ、僕と沙羅ちゃんが親子に見えなくもないと捉えられているのは、喜ばしいことです。僕が沙羅ちゃんを抱っこしていると、ご老年のお客さんが『パパに抱っこされていいねー?』などと言っていただけるので。
「おおきに〜」
それと、賢也君も今日はご一緒に仮装して実演販売していますよ?
賢也君は、同じく沙羅ちゃんのリクエストでオオカミ男です。手の部分は、毛がコーヒーの紙コップに入ってはいけませんので皮の手袋ですが。
「いや〜……売れますねぇ?」
少し客足が落ち着いてから、僕がおふたりのためにコーヒーを淹れました。
仮装しているのは、他のブースでも同じですのに……やはり、沙羅ちゃんがケサランパサランなためかどんどんいらっしゃるんですよね? 沙羅ちゃんは、看板娘の仕事が少し疲れたのかうとうとしかけています。
「せやな? 半分以上は沙羅で、残りは
「賢也君もじゃないですか?」
「俺は二割程度や」
男の僕から見ても、充分にかっこいいですのに。
とは言え、経営側からの意見をきちんとお持ちの彼だからこそ、自分の武器はきちんと把握しているのでしょう。
僕は、亡くなった姉に少し似て……女顔が目立ったのは昔でしたが。今はどう見えるでしょうね?
「繁盛しとるやないの、お兄さん方?」
「「あ」」
耳が長くはないですが、独特の京言葉ぽい話し方に人懐こい笑顔。
少し前の……夏祭りで、大変お世話になった妖怪さん。
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