第2話『大好物の食事』

 主の作る、こぉひぃの豆のカスは……なんでこんなにも美味しいのだろう?


 もちろん、飲み物としてのこぉひぃも……すっごく、美味しい!


 ほとんど苦いけど……カスにもあるように、種類にもよるけど酸っぱかったり、甘かったり。


 本来は熱くするか、すごく冷たくするかで飲むものらしいが……主は、沙羅さらが飲みやすいようにと……ぬるくして飲ませてくれる。


 別に、沙羅は本当の赤子ではないのに……とても気にかけてくれるのだ。


 座敷童子の御方がおっしゃるには……養女という扱いになっているので、主は私を娘のように育ててくれているそうで。


 ケサランパサランでもあるが、あやかしをそのように扱うなど……願いを叶えれば、弾けて消えてまた生まれるだけの存在なのに。


 主は、沙羅をそのようには扱わないのだ。


 とても……不思議である。



「沙羅ちゃん! 今日のお昼ご飯は、沙羅ちゃんのお好きな甘納豆お赤飯のおにぎりです!!」


「あ!(お赤飯!?)」



 あの、大きさは不揃いな……小豆だけじゃなく、色んな豆の入ったお赤飯!!


 沙羅の……こぉひぃの次に好きなご飯!!


 主は、キッチンという簡易的なくりやで作っていた……甘い匂いの正体はこれか。


 客からも、『甘い匂い?』と言われていたので……納得出来た。これも、沙羅のために!!



「はい、お待たせ致しました!」



 主は、沙羅が食べやすいように……今の手で持ちやすい大きさに握ってくれている。その心遣いが、沙羅にはとても嬉しい!!


 沙羅が座っている……卓が付いている椅子の前に置くと、手を少し温かい布巾でよく拭いてから……食べていいと言ってくれた。


 食べれるものがあれば良い……という概念しかなかったケサランパサランだったが。主と出会ったことで、いくらか変わった。


 ヒトには、色々作法が縛りがあるらしい。


 もちろん、それは食事に感謝するための儀式のようなものだそうだが。



「あう!(いただきます!)」



 手を合わせて、それらしい言葉を口にして。


 主にも目線で許可をいただけたので……お赤飯の握りをひとつ手に取る。


 ふわんと、良い香りが鼻をくすぐる。


 こぉひぃとは違う、豆の優しさと甘い匂い。


 我慢出来ずに……口に放り込むと、もち米の柔らかさに加えて豆のホクホクとした噛み応え!


 これぞ志向!!


 夢中になって、口の中で噛んでいく。


 沙羅の場合、赤子だが歯はきちんとあるのだ。座敷童子の御方が言うには……やはり、ヒトのようでいてあやかしだからだそうで。

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