第十一章 綿ぼこりの経緯

第1話 自分は沙羅

 沙羅さらは沙羅。


 綿ぼこり……ケサランパサラン。


 なんでもない……ただのケサランパサランだった。


 あの人に……出会うまでは、なんでもない存在だった。


 美味しい匂いがして……飛んで飛んで、あの人のところまで向かって。捕まえてもらった時は、すっごく嬉しかった。



(ああ……この人のそばにいられる)



 だから、契約の証として……何か口にせねば。


 おしろいはなかったけど……変わった粉を口にした途端。


 何故か、ヒトの赤子のような姿になってしまった。


 あの人は……それでもとても喜んでくれたけれど。


 そして……座敷童子の御方のおかげで、『沙羅』として主のそばにいてもいいということになり。


 美味しい美味しい……少し苦いけど、とても美味しい……こぉひぃや豆のカスを頂戴することが出来るようになった。


 たしかに……ヒトは豆のカスを口にはしないだろうが。


 もともと、粉を口にすることが多い我らケサランパサランにとってはなんの苦もない。


 ただただ……美味しいものでしかなかった!



「沙羅ちゃん、本日もブルマンのカスですが」


「あう!(食べたいです!)」



 先日から……座敷童子の御方の影響が現れた証拠として、小豆の一部は食べられるようにはなったが。


 まだまだ……主の手ずから出来上がった、こぉひぃやカスの方が断然好みだった。


 今店には、沙羅と主だけ。


 存分に……カスを食べられると言うことだ。


 食器はコップ以外うまく扱えないため、主から食べさせてもらうが。


 ざらっとした、カスの感触。


 そこに……深い味わいと適度な苦味。


 味としては、酸っぱいと苦いが混じった味わいではあるが……これが、病みつきなのだ。


 豆の種類でいくらでも変わるのだが……沙羅にとっては最上の褒美。


 こぉひぃもだが、この豆がたまらないのだ!!

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