第2話『素直なコーヒー』
そして、ちょうどコーヒーも出来上がったので……
「とても良い香りですね……」
「ほんとに!」
猫の頭でも飲めるのかなと思いましたが……人間の姿とあまり変わらない手の動きや顔の感じなのと、やはり妖怪さんだからか猫とは違うのでしょう。
ちなみに、火坑さんの手は肉球がない毛のある猫の手でした。
用意したカップのひとつを、綺麗な持ち方で手に取り……少しドキドキしましたが、火坑さんはなんの躊躇いもなくコーヒーを口に運び、飲んでくださいましたよ。
「……豊かな香り。雑味の少ないこの味わい……界隈でも玄人の方はいらっしゃいますが、負けておりません。相手を思い遣る……とても素直な御心が表れていますよ」
「…………ありがとうございます」
料理人の方から、そのようなお言葉をいただけて恐縮です。
つい、涙ぐんでしまいそうになりましたが……ぐっと堪えましたとも。
「ほんと! 飲みやすくて美味しいですね!」
奥さんである
ちなみに、お二人がまず飲んでくださったのはブルマンの方でした。
「ありがとうございます」
「これは、沙羅ちゃんが虜になるのもわかる気がします」
「ええ、そうですね? ……その豆カスをそのまま?」
「はい」
少し冷めた豆カスをあげる準備をしていると、火坑さんが興味深く聞いてくださいました。
「あう、あ!」
沙羅ちゃんが待ちきれそうにないので……すぐに、いつも通りスプーンで食べさせてあげますと、美兎さん以上にほっぺをピンクにして手をバタバタしましたよ!
「……へー……」
「あやかしなら納得出来ますが、本当に」
火坑さんは僕らの前に移動してくると、沙羅ちゃんと豆カスを交互に見てくださいました。
「う?」
沙羅ちゃんが豆カスをごっくんとすると、火坑さんと目が合ったのか……しばらく、じーっと見つめていました。
「改めて。初めまして、沙羅さん。僕は火坑と言うものです」
「……うー、あ」
「ふふ。ご心配なさらずとも……店長さんに害を与えるつもりなどは毛頭ありません」
「う!」
会話……されているのでしょうか?
沙羅ちゃんが何故か、誇らしげにしているのが可愛らしいですけど。
「えっ……と、火坑さん? 沙羅ちゃんとお話出来るんですか?」
「いえ、全然」
これには、美兎さんと一緒にその場で転けかけましたよ!?
「あ、あ!」
沙羅ちゃんはカスのおかわりを欲しいとおねだりしてきましたので、ひと口ひと口食べさせていると……なんと、火坑さんがちょっとだけ皿のを舐めたんです!?
「……ふむ。雑味が少ない」
妖怪さんだから……何でも食べてるんでしょうか?
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