第4話 可愛らしいカップル



「こんにちは。知人の勧めで来たのですが……」



 男性の方が僕に質問してきて、軽く会釈してくださいました。


 僕も自覚はありますが、随時と物腰が柔らかい男性のようです。後ろの女性も僕と目が合うと軽く会釈してくださいましたよ。



「そうなんですね? ようこそ、いらっしゃいました。カウンターしかありませんが、座られますか?」


「ありがとうございます」


「わあ! 可愛い赤ちゃん!」



 女性が沙羅さらちゃんに気づくと……ゆっくり、そろそろ〜っと近づいていかれました。ゆっくりだったお陰か、コーヒーを飲んでうとうとしかけていた沙羅ちゃんは、特に泣き出しもしませんでした。もともと、あまりぐずることもない妖怪さんですが。



「う?」


「可愛い! えっと……店長さんの?」


「預かっている子なんです。沙羅ちゃんと言います」


「そうなんですね! 沙羅ちゃーん?」


「う!」


美兎みうさんは子供好きですしね」



 女性のお名前は、美兎さんだそうです。可愛らしいですね?



響也きょうやさんもじゃないですか?」


「ふふ。そうですね? とりあえず、注文しましょう?」


「あ、そうですね」


「メニューはこちらとなります」



 ラミネート加工した紙一枚だけのメニューですが……基本的に僕ひとりで切り盛りするので、仕方がありません。賢也けんや君は今日はまだいらしていません。オーナーとは言え、毎日来るわけではありませんからね?



「うーん。悩みますね」



 響也さんと呼ばれた男性ですが……悩む表情も、同じ男の僕から見ても、凄く綺麗でかっこいい方です。美兎さんの方も、可愛らしい美人さんですし……本当にお似合いですねぇ?



「店長さん、ブラックでオススメの銘柄はどれなんでしょうか?」



 美兎さんが僕に質問されたので、僕はにっこりと笑いました。



「そうですね……少し値段は高いですが、ゆっくり味わって召し上がりたい場合はブルマンブレンド。まろやかであれば、モカブレンドでしょうか」


「うー……どっちも気になります」


「では、美兎さん。僕がブルマンを頼むので飲み比べしませんか?」


「いいんですか?」


「では、二つお受けしますので……量は半分になりますがカップを二つにしましょうか?」


「「いいんですか?」」


「今はお二方だけですので」



 ひとり、自由に営業出来るからこその気配りだ。


 お二人ともとても嬉しそうに微笑んでくださったので、今日も張り切ってコーヒーを淹れますとも!



「……本当に、間半まなかさんから伺った通り。素晴らしいバリスタの方なんですね?」


「え?」



 響也さんの口から出た言葉は……あのぬらりひょんさんのお名前でした。


 僕が驚くと、響也さんは……手を自分の前にひらひらと扇いで。光がシュバっとあふれて……店内に広がったんです!?

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