第八章 綿ぼこり食生活改善②
第1話『香り豊か、ブルマンブレンド』
お店にあるような、エスプレッソマシーンは流石に自宅では置けませんので……小型の電動ミルで冷凍保存していたコーヒー豆を挽いて、あとはドリップコーヒーを作るだけです。
ただ、初対面とは言え……
「間半さん、ひとついいでしょうか?」
「うん? なんだい?」
「いえ。コーヒーの味の好みはお有りでしょうか?」
「……そんなことまで聞いてくれるのかい?」
「店だとあまり対応出来ませんが、ここは僕の家ですし」
それに、出来るだけ美味しいコーヒーを飲んでいただきたいですから。
「そうだね。酸っぱいよりはまろやかが好みかな?」
「……では。皆さん用にも淹れますので、とっておきのブルーマウンテンブレンドを」
「
「……美味しいのー?」
「コーヒーの銘柄やったら、かなり上位ランクや」
「ふふ。僕のために有難いねぇ?」
お湯を沸かし、軽く湯冷ましさせて。
挽いた豆を丁寧に紙のドリップシートの中に入れて……ポットは人数が多いので、ふたつ。僕が練習する用に道具は多めに用意してあるんですよね?
カップの方も、お客様用のものをお湯で温めて……そうこうしているうちに、ブルーマウンテンのホットコーヒーの出来上がりです。
「お待たせ致しました」
お店ではないですが、お客様が多い今はつい同じ言葉で対応してしまいます。
「うーん、良い香りだ」
「ほんとー」
まずは、妖怪のおふたりさんの前に置くと……おふたりは香りを楽しんでくださいました。嗜好品でも、こういうのは香りでもまず楽しめますからね?
「う、あー!」
「
沙羅ちゃんには、水で少し薄めたぬるめのものを。お代わり用のストロー付きコップを渡しますと、すぐにちゅーちゅーと飲み始めました。
「ほう? そんなにも……うんうん。いい温度と深い味わいだ」
ほんのひと口、間半さんは口につけてくださると率直な感想を聞かせてくださいました。
「お粗末様です」
「いやいや。これはケサランパサラン……沙羅、と言ったか? この子が形態変化してまで、君のそばに居たい気持ちもわからなくないね? こんな美味しいコーヒーが毎日でも飲めたら、居付きたくなるだろう」
「……沙羅ちゃんは、僕の手元に居ても?」
「ああ。きちんと世話をしているし……あやかしではなく、ひとつの『存在』として接している。君なら、大丈夫だ」
「……俺もおるで」
「はは、そうだね」
もちろん、
幼馴染みであり、大事な恩人ですとも。
「じゃ、総大将がわざわざ来たのなら……柊司君らをあちらに連れて行かずとも?」
「いやいや、近いうちにおいでよ? 面白い相手とも紹介させてほしい。料理人だが……柊司君にはいい相手かもしれない」
「……女か?」
「いや? 最近結婚してねぇ? コーヒー好きだから、単に柊司君のを飲ませてやりたいと思って」
「……そのような方に?」
僕のような、半分素人のバリスタが振る舞っていいのでしょうか?
ドキドキしていると、沙羅ちゃんからまたお代わりを催促されました。
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