第3話 バレた代わりに



「あう?」



 僕の腕の中で、行儀良く抱っこされている沙羅さらちゃんは浴衣の装いの効果もあってか……首を傾げるだけでいつも以上に可愛く見えます!



「おんや? 姿はヒトに似せてはりますけど……そちらのお嬢さん、ケサランパサランやおへんか?」


「うん。抱っこしてる柊司しゅうじ君が主」


「ほーん? …………お兄さん、ヒトの子でっしゃろ?」


「あ?」


「え?」



 颯太ふうた君の目くらましの浴衣を着ているのに……美麗みれいさんにはバレてしまったようです。僕もですが、賢也けんや君も持っていたベーコン串の残りを落としそうになりました。



「ほっほ。うちにはわかるえ? 颯太はんの術はあれど、耳長のもんもそれなりに術に長けたもんが多い。うちもそのひとりや」


「あんまり言いふらさないでねー? 今回とか特別だから」


「そやなあ。幸運の象徴……ケサランパサランをそんな風に形態変化させる豪運の持ち主やさかい。ちぃっと気になってしもうて」


「あう?」



 沙羅ちゃんには何を言われているか……さっぱりだと首を傾げていましたが、僕は賢也君と一緒に汗が背中からダーダーに流れる感じで緊張しています!!



「……柊司、下手に逆らわん方がええで?」


「ええ、もちろん。沙羅ちゃんに何かあってはいけませんし」



 僕らがコソコソ話していると……あちらでも話がまとまったのか。何故か、ふたりでハイタッチされていました。



「んじゃ、そうしよう」


「ええ、おおきに。すぐお持ちしますわ」



 と、美麗さんが後ろの大きめのクーラーボックスから……何か大きな紙箱を出してきました。和菓子などに使うようなしっかりした紙箱です。



「……それは?」


「お兄さん、あんこ玉言う菓子は知っているえ?」


「あんこ玉? 小豆の餡子のお菓子ですか?」


「あっとるけど……その感じやと、ちぃっと違うんよ」



 ふたを開けてくださった中身は。


 少しいびつな餡子をビー玉にしたものと、食紅を使ったような……数種類、色付けして作った細工菓子でした。



「これは……?」


「ここいら、信濃より北……津軽。つまり、青森の地では有名な餡子を使ったくじ引きや。ほんまは店に出そうか悩んどったんやけど、数が間に合わんくて。けど、勿体のうて知人にだけやってもらおうと持ってきてん」


「「へー?」」


「秘密にしてくれる代わりに、味見と参加で手を打ったわけ」



 えっへん、と颯太君は誇らしげに胸を張りました。それには、本当に有難いと……僕と賢也君は深くお辞儀をしましたとも!!



「ほんなら、お嬢さんも参加してくだしゃんせ? 指向けてくれるだけでええよし」


「ありがとうございます。この玉の方を選ぶのですか?」


「そうえ。中に、こっちのように色付けした餡子の核が入っとるんよ。その色で等が違うんや」


「ちなみに、一等ってどれなん?」


「赤い鯛や」


「「おお……」」



 細工が細かい……鯛の形の和菓子が一等。


 色は、赤が一等。


 緑が二等。


 黄色が三等。


 白が四等。


 それぞれ、サイズは違いますが味は美麗さんが保証するくらい美味しいお菓子だそうです。


 沙羅ちゃんはどれを選ぼうか、箱を見ながら『うー』っと可愛く言いつつ眺めていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る