第2話『豚串、ベーコン串は耳長の者が』
まずは、豚串から。
脂身の多い部分なので……おそらく、ハラミの部分でしょう。
タレはない代わりに、少し粗挽きの黒胡椒が見えました。ですと、味付けは塩胡椒のはず。
焼き立てをちょうど買えましたので、僕は軽く息を吹きかけてからかぶりついてみました。
「んん!?」
まずは、脂。
固くはなく、しかしながら柔らかくて舌の上でふわふわと溶けて消えていくような感じはします。それに、予想していた塩胡椒がその脂の味を甘く仕上げていました。ピリリと効く胡椒の味付けがあとを引きます!
次に肉の部分。こちらも香ばしく焼かれているのに……噛めば簡単に解けるくらいの柔らかさです。どのような下ごしらえをしたのでしょうか。人間の料理人でも難しい技術です。僕も、亡くした姉の影響で独学で調べたり色々挑戦していた時期がありましたが……今では、無理です。
相応の修行が必要でしょう。
「うんまー!?」
「うん、良い味!」
そして、賢也君とほぼ同時にペロリと串を平らげてしまいました。
「ええ食べっぷりやなあ? 嬉しいわ〜」
賢也君のような、関西弁……と言うより、京言葉に近いでしょうか?
女性の声が聞こえたので、その方向を見ると屋台のところに……耳が長いお姉さんがいらっしゃいました。まるで、ファンタジー小説とかに出てくるようなエルフさんのように。
「おん? 気ぃつかんかったわ。エルフなんか?」
「違う違う」
「ちゃうわ〜。あれは人間が勝手につけたあだ名や。うちらはうちらで、『耳長族』とか呼ばれているんよ」
「ほぉーん?」
「そうなんですか?」
妖怪さんなのかはわかりませんが、色々事情があるようです。
「や、
「おひさしゅうございます、座敷童子の御方」
「今は颯太でいいよー?」
「ほな、颯太はん」
「うん」
どうやら、このおふたりはお知り合いのようです。
「とても美味しいです。仕込みは美麗さんご自身で?」
「せやで? 捌くから味付けまでうちがやったえ」
「丁寧なお仕事だとお見受けしました。勉強になります」
「お兄さんも料理人さんなん?」
「いいえ。どちらかと言うとバリスタ……コーヒーを淹れることがメインです」
「ほーん?」
美麗さんが、赤い唇を緩ませて微笑みを浮かべました。そこに、僕を馬鹿にするような雰囲気は感じ取れません。
純粋に、僕の言葉が嬉しかったのか、何度か頷きました。
「
賢也君がそう言いますので、少し冷めていましたがベーコンの方もひと口かじると。
物凄く……お酒が欲しくなるくらい濃厚で美味しい味付けでした。
「ほっほ。嬉しいわ〜? お兄さんらにも、颯太はんにも喜んでいただけて」
声を出しながら、ころころと笑われるのもお綺麗ですね? 他の妖怪さん達もですが、颯太君のように外見が綺麗なのは共通点なのでしょうか?
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