第六章 綿ぼこり祭りに②

第1話 あやかしの食べ物

 僕らはそれから……颯太ふうた君の後ろから絶対はぐれないように、妖怪さん達の出店を回ることにしました。


 たしかに、颯太君が言ったように妖怪さんらしい出店もありましたが……ホラーが得意な僕にはへっちゃらでした。賢也けんや君は少し怖がっていましたが、沙羅さらちゃんは抱っこしている僕の腕の中で、はしゃいでいます。さすがは、妖怪さんと言うべきでしょうか?


 相変わらず、沙羅ちゃんの口に合うご飯やお菓子は見つかりませんが……僕と賢也君の夕飯がまだだったので、少し空腹を感じた為、出店で何かを買おうと思いました。



「……なあ、颯太」


「んー?」



 賢也君が、おそらく初めて颯太君を名前呼びしました。僕、少し感動しました! 少しずつ、ふたりが打ち解けたからかもしれないんですもの!!



「……沙羅はともかく。こういうとこの飯……俺らが食っても問題ないん?」


「ああ! あの世の食べ物を口にしたら、現実に戻れないってやつ?」


「せや。……あるん?」


「ううん? それは冥府……あの世に行った場合だとあるけど。ここのは大丈夫だよー? ちょっとすれ違ったけど、人間の参加者も混じっているし……あやかしとかも下手に敵対したくないしさ?」


「「え??」」



 ほら、と颯太君が扇子を向けた方向には……たしかに、狐耳とかはないですが……神社の神主さんのような服装をした男女がいらっしゃいました。



「まあ。あれは、大昔の人間が小さい神に昇格した姿だけど」


「結局は人間やないやん!?」



 すかさず、ツッコミを入れる賢也君はさすが関西人です。ほとんどは僕と同じ地元で育ったんですが、生まれとご両親の教育のおかげか、違和感のない関西人に育ったんですよね?



「大丈夫大丈夫! とりあえず……肉? 海鮮? 大抵のはあるよ?」


「……ほんまに大丈夫か?」


「うん! お腹空いたなら食べようよ」


「そうですね。僕も少し……」



 お昼とおやつぐらいに、軽く食べてきただけですから。



「あうー!」



 沙羅ちゃんも興味はあるようですが、念のために持参したモカブレンドの豆かすを入れた袋から……少し食べていただきました。ご飯を探しにきたとは言えど、お腹をぺこぺこにさせてはいけないと思って。



「あれ食べよ!」



 と、僕が沙羅ちゃんにご飯を上げたあとに……颯太君が『豚串、ベーコン串』と書かれた屋台に指を向けました。


 暴力的なまでの、香ばしい肉の焼けた香りがたまりません!!



「お!? ナイスチョイスやで!」


「ふふーん! んじゃ、買おうよ!!」


「おん。……やっす!? 俺が人数分買うわ」



 たしかに……人間側では値上がりし続けている物価を思うと、大きな串が一本三百円は安いです!?


 賢也君が買ってくださってから受け取ると……僕もですが、沙羅ちゃん以外もう我慢が出来ないとばかりに豚串にかぶりつきました!!

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