第4話 懐かしい射的②

 いや〜……大漁大漁と言うべきでしょうか?



「……お兄さん、もう勘弁してくだせぇ!!」


「あ、はい。すみません?」


「うぅ……」



 賢也けんや君は全然ダメだった射的が……何故か、僕は百発百中と言う具合に。一発でぽんぽん取れたんです。


 大きいぬいぐるみまで……せっかくだからと、颯太ふうた君がお金を出すから取って、と言われましたもので……実行したら、全部取れたのですよ。そのため、店主の猫耳さんに勘弁と言われた次第です。



「わぁぉ! ほんと、柊司しゅうじ君すごぉい!!」



 その颯太君は、モコモコで触り心地が良さそうなクマさんのぬいぐるみを大事そうに抱えながら、空いている手で扇子を広げました。



「普通に狙っただけなんですけどねえ?」



 僕にこんな素質があるだなんて、思えません。



「……多分、沙羅さらがいるからじゃない?」



 僕が疑問に思っていると、颯太君はこそっと教えてくれました。



「沙羅ちゃんが??」


「今は柊司君のケサランパサランだから……柊司君の望みを叶えてあげたんだと思うよ? 見えにくいけど、ケサランパサランの鱗粉も出てるし」


「え、鱗粉??」


「毛ぼこりとも言うかな? 幸運成分たっぷりの粉が、君に振りかかっているからさ」


「……特に何もありませんが」



 妖怪さんである颯太君は言うのなら、それは本当かもしれませんね?


 とりあえず、全部は持ち歩けませんので一部はお金を返してもらうことで返却しました。


 沙羅ちゃん用に……と、獲ったお菓子をとりあえず、屋台の並びの端に移動して、あげてみることにしました。



「ほーん。ほとんど人間の菓子と同じやな?」



 景品整理をしながら、賢也君も沙羅ちゃんが食べられそうなお菓子を探してくれています。



「人間の食べ物も結構美味しいからね? あ、うにあられ! 塩っぱいものとかどうだろう?」


「……赤ん坊にはあかんけど」


「普通の赤児じゃないからね? 沙羅〜、これどう??」



 颯太君が袋をちらつかせてみても……沙羅ちゃんは僕に抱っこされながら首を左右に振った。これは食べたくないのでしょう。



「ん〜〜……あ、これはコーヒー麦チョコ」



 絶対赤ちゃんにはあげて良くないものばかりですが、沙羅ちゃんはコーヒーと豆カスが大好物。


 以前のアフォガートもリバースしましたが、ひと口どうでしょう? と僕が袋をちらつかせれば……ちょっとだけ興味を持ってくださいまして、僕はひと粒あげてみました。



「あー……」



 結果は、リバース。


 せっかくの浴衣が汚れないように、景品のひとつだったよだれかけを装着して正解でした。


 ひとまず、お菓子を無駄にしないように……景品は颯太君が魔法か何かで小さくして持ち運びしてくださるようです。


 それからは、また夏祭りを楽しむことにしました。

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